シュバルツシルト解(外部解)の導出(2)

2.2 方程式を作る

2.1節で計量テンソルを未知関数で表したので、解くべき方程式である(3)式にそれを代入する。

原理的には、計量テンソルが決まればクリストッフェル記号が決まり、クリストッフェル記号が決まればリーマンテンソルが決まり、リーマンテンソルが決まればリッチテンソルが決まり、リッチテンソルが決まればスカラー曲率が決まる。そうして決まったリッチテンソルとスカラー曲率によってアインシュタインテンソルが決まる。その具体的な作業をやろうということである。

ただし実際にはリーマンテンソルを未知関数で表す作業は冗長であり、クリストッフェル記号から直接リッチテンソルに進むことになる。

それと、アインシュタインテンソルまで計算せずリッチテンソルを未知関数で表した段階で方程式を解く作業に進むような解法がある。それについては実際にリッチテンソルの表式まで出した後でまた説明する。

計量テンソル

計量テンソル 𝑔𝜇𝜈 は(12)式のとおりで、もう一度書くと (𝑔𝜇𝜈)= ( 𝐴000 0𝐵00 00𝑟20 000𝑟2sin2𝜃 ) (12) である。ここからは 𝐴 や 𝐵 の引数を表す (𝑟) は省略することにする。

ここで、 𝐴 や 𝐵 自体ではなくその対数を取った関数について解くことで計算を省力化する計算テクニックがある。それについては3.3節で述べる。今はその計算テクニックを用いず普通に 𝐴 や 𝐵 について解いていく。

この後の計算で添え字が上にある 𝑔𝜇𝜈 が必要になるので計算しておく。それは 𝑔𝜇𝜈 の逆行列であるが、今は対角行列であるから対角成分を逆数にするだけでよいので (𝑔𝜇𝜈)= ( 1𝐴000 01𝐵00 001𝑟20 0 0 0 1𝑟2sin2𝜃 ) (13) である。

計量テンソルの微分

この後でクリストッフェル記号を求める際に 𝑔𝜇𝜈 の微分が必要になるので計算しておく。0でない成分は ∂𝑔00∂𝑥1 = ∂𝑟(𝐴) =𝐴(14) ∂𝑔11∂𝑥1 = ∂𝑟𝐵 =𝐵(15) ∂𝑔22∂𝑥1 = ∂𝑟𝑟2 =2𝑟(16) ∂𝑔33∂𝑥1 = ∂𝑟(𝑟2sin2𝜃) = 2𝑟sin2𝜃 (17) ∂𝑔33∂𝑥2 = ∂𝜃(𝑟2sin2𝜃) = 2𝑟2sin𝜃cos𝜃 (18) である。ただしプライム ′ は座標 𝑟 による微分 dd𝑟 を表す。これら以外の成分はすべて0である。

計量が対角行列のときに限って使えるクリストッフェル記号の公式

クリストッフェル記号の定義は 𝛤𝜆𝜇𝜈 = 12 𝜌=03 𝑔𝜆𝜌 ( ∂𝑔𝜈𝜌∂𝑥𝜇 + ∂𝑔𝜇𝜌∂𝑥𝜈 ∂𝑔𝜇𝜈∂𝑥𝜌 ) (19) である。都合によりここではアインシュタインの縮約記法を用いずに書いた。

ここで慌てて(13)(18)式(19)式に代入して具体的な表式を求めようとすると、計算の途中で何度も同じようなことを考えなければならず損である。その前に、計量が(12)式のような対角行列の場合は(19)式の定義式が大幅に簡略化されるので、先にその計算をやっておく。

一般には(19)式を展開すると12個の項からなっており計算が面倒である。しかし今は計量が対角行列だと言っているのだから、 ∑ 内の最初にある 𝑔𝜆𝜌 は 𝜆 ≠ 𝜌 なら0である。したがって 𝜌 は0から3まで動くうち 𝜆 と等しくなったときのことだけを考慮すればよい。また、∑ 内の括弧内の偏微分も計量テンソルの2つの添え字が異なるときは0なので無視できる。そこで、 𝛤 の3つの添え字のパターンに応じて次のように場合分けをする。以下①〜④の欄に限り、アインシュタインの縮約記法を使っておらず、同じ添え字が2回現れても ∑ がない限り和を取ってはならない。

① 3つの添え字がすべて等しい成分
𝛤𝜆𝜆𝜆 = 12 𝜌=03 𝑔𝜆𝜌 ( ∂𝑔𝜆𝜌∂𝑥𝜆 + ∂𝑔𝜆𝜌∂𝑥𝜆 ∂𝑔𝜆𝜆∂𝑥𝜌 ) = 12𝑔𝜆𝜆 ( ∂𝑔𝜆𝜆∂𝑥𝜆 + ∂𝑔𝜆𝜆∂𝑥𝜆 ∂𝑔𝜆𝜆∂𝑥𝜆 ) = 12𝑔𝜆𝜆 ∂𝑔𝜆𝜆∂𝑥𝜆 (20)
② 上付添え字のみが異なり、2つの下付添え字が等しい成分
𝛤𝜆𝜇𝜇 = 12 𝜌=03 𝑔𝜆𝜌 ( ∂𝑔𝜇𝜌∂𝑥𝜇 + ∂𝑔𝜇𝜌∂𝑥𝜇 ∂𝑔𝜇𝜇∂𝑥𝜌 ) = 12𝑔𝜆𝜆 ( ∂𝑔𝜇𝜆∂𝑥𝜇 + ∂𝑔𝜇𝜆∂𝑥𝜇 ∂𝑔𝜇𝜇∂𝑥𝜆 ) = 12𝑔𝜆𝜆 (0+0∂𝑔𝜇𝜇∂𝑥𝜆) = 12𝑔𝜆𝜆 ∂𝑔𝜇𝜇∂𝑥𝜆 (21)
③ 一方の下付添え字のみが異なり、他方の下付添え字と上付添え字が等しい成分
𝛤𝜆𝜆𝜇 = 𝛤𝜆𝜇𝜆 = 12 𝜌=03 𝑔𝜆𝜌 ( ∂𝑔𝜆𝜌∂𝑥𝜇 + ∂𝑔𝜇𝜌∂𝑥𝜆 ∂𝑔𝜇𝜆∂𝑥𝜌 ) = 12𝑔𝜆𝜆 ( ∂𝑔𝜆𝜆∂𝑥𝜇 + ∂𝑔𝜇𝜆∂𝑥𝜆 ∂𝑔𝜇𝜆∂𝑥𝜆 ) = 12𝑔𝜆𝜆 ∂𝑔𝜆𝜆∂𝑥𝜇 (22)
④ 3つの添え字がすべて異なる成分
𝛤𝜆𝜇𝜈 = 12 𝜌=03 𝑔𝜆𝜌 ( ∂𝑔𝜈𝜌∂𝑥𝜇 + ∂𝑔𝜇𝜌∂𝑥𝜈 ∂𝑔𝜇𝜈∂𝑥𝜌 ) = 12𝑔𝜆𝜆 ( ∂𝑔𝜈𝜆∂𝑥𝜇 + ∂𝑔𝜇𝜆∂𝑥𝜈 ∂𝑔𝜇𝜈∂𝑥𝜆 ) = 12𝑔𝜆𝜆 (0+00) =0(23)

クリストッフェル記号

ではクリストッフェル記号の各成分の表式を求めよう。(13)(18)式(20)(23)式の公式に代入する。

①のパターンは、 ∂𝑔𝜆𝜆∂𝑥𝜆 が0でないのは(15)式の 𝜆 = 1 の場合だけであるから、 𝛤111 = 12𝑔11 ∂𝑔11∂𝑥1 = 121𝐵𝐵 =𝐵2𝐵 であり、これ以外の場合は0である。②のパターンは、 ∂𝑔𝜇𝜇∂𝑥𝜆 が0でないのは(14)(16)〜(18)式の場合であるから、 𝛤100 = 12𝑔11 ∂𝑔00∂𝑥1 = 121𝐵(𝐴) =𝐴2𝐵 𝛤122 = 12𝑔11 ∂𝑔22∂𝑥1 =121𝐵2𝑟 =𝑟𝐵 𝛤133 = 12𝑔11 ∂𝑔33∂𝑥1 = 121𝐵2𝑟sin2𝜃 =𝑟𝐵sin2𝜃 𝛤233 = 12𝑔22 ∂𝑔33∂𝑥2 = 121𝑟2 2𝑟2sin𝜃cos𝜃 =sin𝜃cos𝜃 であり、これら以外の場合は0である。③のパターンは、 ∂𝑔𝜆𝜆∂𝑥𝜇 が0でないのは(14)(16)〜(18)式の場合であるから、 𝛤001 = 𝛤010 = 12𝑔00 ∂𝑔00∂𝑥1 = 12 (1𝐴)(𝐴) =𝐴2𝐴 𝛤221 = 𝛤212 = 12𝑔22 ∂𝑔22∂𝑥1 = 121𝑟22𝑟 =1𝑟 𝛤331 = 𝛤313 = 12𝑔33 ∂𝑔33∂𝑥1 = 121𝑟2sin2𝜃 2𝑟sin2𝜃 =1𝑟 𝛤332 = 𝛤323 = 12𝑔33 ∂𝑔33∂𝑥2 = 121𝑟2sin2𝜃 2𝑟2sin𝜃cos𝜃 =cos𝜃sin𝜃 =cot𝜃 であり、これら以外の場合は0である。④のパターンはすべて0である。以上でクリストッフェル記号のすべての成分が求まった。まとめてもう一度書いておくと、0でない成分は以下である。

𝛤100= 𝐴2𝐵 , 𝛤010= 𝛤001= 𝐴2𝐴 , 𝛤111= 𝐵2𝐵 , 𝛤212= 𝛤221= 1𝑟 , 𝛤313= 𝛤331= 1𝑟 , 𝛤122= 𝑟𝐵 , 𝛤323= 𝛤332= cot𝜃 , 𝛤133= 𝑟𝐵sin2𝜃 , 𝛤233 = sin𝜃cos𝜃 (24)

クリストッフェル記号の微分

この後でリッチテンソルを求める際にクリストッフェル記号の微分が必要になるので計算しておく。(24)式をただ微分するだけなので、結果だけを書くと、0でない成分は以下である。 ∂𝛤010∂𝑥1 = ∂𝛤001∂𝑥1 = 𝐴2𝐴 𝐴22𝐴2 (25) ∂𝛤100∂𝑥1 = 𝐴2𝐵 𝐴𝐵2𝐵2 (26) ∂𝛤111∂𝑥1 = 𝐵2𝐵 𝐵22𝐵2 (27) ∂𝛤212∂𝑥1 = ∂𝛤221∂𝑥1 = 1𝑟2 (28) ∂𝛤122∂𝑥1 = 1𝐵+𝐵𝑟𝐵2 (29) ∂𝛤313∂𝑥1 = ∂𝛤331∂𝑥1 = 1𝑟2 (30) ∂𝛤133∂𝑥1 = ( 1𝐵+𝐵𝑟𝐵2 ) sin2𝜃 (31) ∂𝛤133∂𝑥2 = 2𝑟𝐵sin𝜃cos𝜃 (32) ∂𝛤323∂𝑥2 = ∂𝛤332∂𝑥2 = 1sin2𝜃 (33) ∂𝛤233∂𝑥2 = cos2𝜃+sin2𝜃 (34) 実は(27)(32)式はこの後で使わないので計算する必要はなかったのだがついでに書いておいた。

リッチテンソル 𝑅𝜇𝜈

リーマンテンソル 𝑅𝜌𝜇𝜆𝜈 およびリッチテンソル 𝑅𝜇𝜈 の定義は 𝑅𝜌𝜇𝜆𝜈= ∂𝛤𝜌𝜇𝜈∂𝑥𝜆 ∂𝛤𝜌𝜇𝜆∂𝑥𝜈 + 𝛤𝜎𝜇𝜈 𝛤𝜌𝜎𝜆 𝛤𝜎𝜇𝜆 𝛤𝜌𝜎𝜈 (35) 𝑅𝜇𝜈= 𝑅𝜆𝜇𝜆𝜈 (36) である(ただし符号を逆に定義する流儀もある)。そこで(35)式(36)式に代入すれば 𝑅𝜇𝜈= ∂𝛤𝜆𝜇𝜈∂𝑥𝜆 ∂𝛤𝜆𝜇𝜆∂𝑥𝜈 + 𝛤𝜎𝜇𝜈 𝛤𝜆𝜎𝜆 𝛤𝜎𝜇𝜆 𝛤𝜆𝜎𝜈 (37) のようになる。いったんリーマンテンソルを計算するよりも、(37)式を使ってクリストッフェル記号とその微分から直接リッチテンソルを計算する方が楽なので、そのようにする。

ここで(37)式の中に 𝛤𝜆𝜇𝜆 とか 𝛤𝜆𝜎𝜆 というクリストッフェル記号の縮約が出てくる。これは定義に従って各成分を計算してから和をとってももちろんよいのであるが、それとは別の専用の公式を使う方法がある。その方法は3.2節で紹介する。今は専用の公式は使わないで定義に従った方法で計算する。劇的に手間が変わるわけではない。

ではリッチテンソルの各成分の表式を求めよう。(37)式を使って、(24)(34)式と見比べながら0でない成分を代入していくだけである。この下の式変形では、添え字に具体的な数字(0〜3)を代入する段階で、項の値が0でないものだけを残すようにしている。

まず対角成分は次のようになる。 𝑅00 = ∂𝛤𝜆00∂𝑥𝜆 ∂𝛤𝜆0𝜆∂𝑥0 + 𝛤𝜎00 𝛤𝜆𝜎𝜆 𝛤𝜎0𝜆 𝛤𝜆𝜎0 = ∂𝛤100∂𝑥1 0 + 𝛤100 ( 𝛤010+ 𝛤111+ 𝛤212+ 𝛤313 ) ( 𝛤100 𝛤010 + 𝛤001 𝛤100 ) = ∂𝛤100∂𝑥1 + 𝛤100 ( 𝛤111+ 𝛤212+ 𝛤313 𝛤001 ) = ( 𝐴2𝐵 𝐴𝐵2𝐵2 ) + 𝐴2𝐵 ( 𝐵2𝐵+ 1𝑟+ 1𝑟 𝐴2𝐴 ) = ( 𝐴2𝐵 𝐴𝐵2𝐵2 ) + 𝐴2𝐵 ( 𝐵2𝐵+ 2𝑟 𝐴2𝐴 ) = 𝐴2𝐵 𝐴𝐵2𝐵2 +𝐴𝐵4𝐵2 +𝐴𝐵𝑟 𝐴24𝐴𝐵 = 𝐴2𝐵 𝐴𝐵4𝐵2 +𝐴𝐵𝑟 𝐴24𝐴𝐵 (38) 𝑅11 = ∂𝛤𝜆11∂𝑥𝜆 ∂𝛤𝜆1𝜆∂𝑥1 + 𝛤𝜎11 𝛤𝜆𝜎𝜆 𝛤𝜎1𝜆 𝛤𝜆𝜎1 = ∂𝛤111∂𝑥1 ( ∂𝛤010∂𝑥1 + ∂𝛤111∂𝑥1 + ∂𝛤212∂𝑥1 + ∂𝛤313∂𝑥1 ) + 𝛤111 ( 𝛤010+ 𝛤111+ 𝛤212+ 𝛤313 ) ( 𝛤010 𝛤001 + 𝛤111 𝛤111 + 𝛤212 𝛤221 + 𝛤313 𝛤331 ) = ∂𝛤010∂𝑥1 ∂𝛤212∂𝑥1 ∂𝛤313∂𝑥1 + 𝛤111 ( 𝛤010+ 𝛤212+ 𝛤313 ) (𝛤010)2 (𝛤212)2 (𝛤313)2 = ( 𝐴2𝐴 𝐴22𝐴2 ) (1𝑟2) (1𝑟2) + 𝐵2𝐵 ( 𝐴2𝐴+ 1𝑟+ 1𝑟 ) (𝐴2𝐴)2 (1𝑟)2 (1𝑟)2 = 𝐴2𝐴 +𝐴22𝐴2 +1𝑟2 +1𝑟2 + 𝐵2𝐵 (𝐴2𝐴+2𝑟) 𝐴24𝐴2 1𝑟2 1𝑟2 = 𝐴2𝐴 +𝐴24𝐴2 +𝐴𝐵4𝐴𝐵 +𝐵𝐵𝑟 (39) 𝑅22 = ∂𝛤𝜆22∂𝑥𝜆 ∂𝛤𝜆2𝜆∂𝑥2 + 𝛤𝜎22 𝛤𝜆𝜎𝜆 𝛤𝜎2𝜆 𝛤𝜆𝜎2 = ∂𝛤122∂𝑥1 ∂𝛤323∂𝑥2 + 𝛤122 ( 𝛤010+ 𝛤111+ 𝛤212+ 𝛤313 ) ( 𝛤221 𝛤122 + 𝛤122 𝛤212 + 𝛤323 𝛤332 ) = ∂𝛤122∂𝑥1 ∂𝛤323∂𝑥2 + 𝛤122 ( 𝛤010+ 𝛤111+ 𝛤313 𝛤221 ) (𝛤323)2 = ( 1𝐵+𝐵𝑟𝐵2 ) (1sin2𝜃) + (𝑟𝐵) ( 𝐴2𝐴+ 𝐵2𝐵+ 1𝑟 1𝑟 ) cot2𝜃 = 1𝐵 +𝐵𝑟𝐵2 +1sin2𝜃 𝑟𝐵 ( 𝐴2𝐴+ 𝐵2𝐵 ) cos2𝜃sin2𝜃 = 1𝐵 +𝐵𝑟𝐵2 +1cos2𝜃sin2𝜃 𝐴𝑟2𝐴𝐵 𝐵𝑟2𝐵2 = 1𝐵 +𝐵𝑟2𝐵2 +1 𝐴𝑟2𝐴𝐵 (40) 𝑅33 = ∂𝛤𝜆33∂𝑥𝜆 ∂𝛤𝜆3𝜆∂𝑥3 + 𝛤𝜎33 𝛤𝜆𝜎𝜆 𝛤𝜎3𝜆 𝛤𝜆𝜎3 = ( ∂𝛤133∂𝑥1 + ∂𝛤233∂𝑥2 ) 0 + { 𝛤133 ( 𝛤010 + 𝛤111 + 𝛤212 + 𝛤313 ) + 𝛤233 𝛤323 } ( 𝛤331 𝛤133 + 𝛤332 𝛤233 + 𝛤133 𝛤313 + 𝛤233 𝛤323 ) = ∂𝛤133∂𝑥1 + ∂𝛤233∂𝑥2 + 𝛤133 ( 𝛤010+ 𝛤111+ 𝛤212 𝛤331 ) 𝛤332 𝛤233 = ( 1𝐵+𝐵𝑟𝐵2 ) sin2𝜃 +(cos2𝜃+sin2𝜃) + (𝑟𝐵sin2𝜃) ( 𝐴2𝐴+ 𝐵2𝐵+ 1𝑟 1𝑟 ) cot𝜃(sin𝜃cos𝜃) = ( 1𝐵+𝐵𝑟𝐵2 ) sin2𝜃 cos2𝜃 +sin2𝜃 𝑟𝐵sin2𝜃 ( 𝐴2𝐴+ 𝐵2𝐵 ) +cos2𝜃 = ( 1𝐵 +𝐵𝑟𝐵2 +1 𝐴𝑟2𝐴𝐵 𝐵𝑟2𝐵2 ) sin2𝜃 = ( 1𝐵 +𝐵𝑟2𝐵2 +1 𝐴𝑟2𝐴𝐵 ) sin2𝜃 = 𝑅22sin2𝜃 (41) いちばん最後は、 𝑅₃₃ を計算した結果を 𝑅₂₂ と見比べてみたら 𝑅₂₂ sin² 𝜃 に等しいことがわかった、という意味である。

続いて非対角成分は、 𝑅01=𝑅10 = ∂𝛤𝜆01∂𝑥𝜆 ∂𝛤𝜆0𝜆∂𝑥1 + 𝛤𝜎01 𝛤𝜆𝜎𝜆 𝛤𝜎0𝜆 𝛤𝜆𝜎1 =00+00 =0(42) 𝑅02=𝑅20 = ∂𝛤𝜆02∂𝑥𝜆 ∂𝛤𝜆0𝜆∂𝑥2 + 𝛤𝜎02 𝛤𝜆𝜎𝜆 𝛤𝜎0𝜆 𝛤𝜆𝜎2 =00+00 =0(43) 𝑅03=𝑅30 = ∂𝛤𝜆03∂𝑥𝜆 ∂𝛤𝜆0𝜆∂𝑥3 + 𝛤𝜎03 𝛤𝜆𝜎𝜆 𝛤𝜎0𝜆 𝛤𝜆𝜎3 =00+00 =0(44) 𝑅12=𝑅21 = ∂𝛤𝜆12∂𝑥𝜆 ∂𝛤𝜆1𝜆∂𝑥2 + 𝛤𝜎12 𝛤𝜆𝜎𝜆 𝛤𝜎1𝜆 𝛤𝜆𝜎2 = 0 0 + 𝛤212 𝛤323 𝛤313 𝛤332 =1𝑟cot𝜃1𝑟cot𝜃 =0(45) 𝑅13=𝑅31 = ∂𝛤𝜆13∂𝑥𝜆 ∂𝛤𝜆1𝜆∂𝑥3 + 𝛤𝜎13 𝛤𝜆𝜎𝜆 𝛤𝜎1𝜆 𝛤𝜆𝜎3 =00+00 =0(46) 𝑅23=𝑅32 = ∂𝛤𝜆23∂𝑥𝜆 ∂𝛤𝜆2𝜆∂𝑥3 + 𝛤𝜎23 𝛤𝜆𝜎𝜆 𝛤𝜎2𝜆 𝛤𝜆𝜎3 =00+00 =0(47) のようにすべて0である。(45)式を除いて途中の計算式に出てくる項もすべて0である。

以上でリッチテンソル 𝑅𝜇𝜈 の表式が求まった。

このページの最初の方で述べたように、この先スカラー曲率(リッチスカラー) 𝑅 やアインシュタインテンソル 𝐺𝜇𝜈 の表式を求める作業を回避してここから直ちに方程式を解く段階に進む方法がある。ただしその方法では解く作業が少しだけ面倒になる。それについては3.1節で述べる。今は普通に 𝑅 や 𝐺𝜇𝜈 の表式を求めていく。

リッチテンソル 𝑅𝜇𝜈

この後の計算で使うため、1個目の添え字を上にあげた 𝑅𝜇𝜈 = 𝑔𝜇𝜌𝑅𝜌𝜈 を計算しておく。(13)式(38)(47)式を代入すればよい。

まず対角成分は次のようになる。 𝑅00 = 𝑔0𝜌𝑅𝜌0 =𝑔00𝑅00 = 1𝐴 ( 𝐴2𝐵 𝐴𝐵4𝐵2 +𝐴𝐵𝑟 𝐴24𝐴𝐵 ) = 𝐴2𝐴𝐵 + 𝐴𝐵4𝐴𝐵2 𝐴𝐴𝐵𝑟 +𝐴24𝐴2𝐵 (48) 𝑅11 = 𝑔1𝜌𝑅𝜌1 =𝑔11𝑅11 = 1𝐵 ( 𝐴2𝐴 +𝐴24𝐴2 +𝐴𝐵4𝐴𝐵 +𝐵𝐵𝑟 ) = 𝐴2𝐴𝐵 +𝐴24𝐴2𝐵 + 𝐴𝐵4𝐴𝐵2 +𝐵𝐵2𝑟 (49) 𝑅22 = 𝑔2𝜌𝑅𝜌2 =𝑔22𝑅22 = 1𝑟2 ( 1𝐵 +𝐵𝑟2𝐵2 +1 𝐴𝑟2𝐴𝐵 ) = 1𝐵𝑟2 +𝐵2𝐵2𝑟 +1𝑟2 𝐴2𝐴𝐵𝑟 (50) 𝑅33 = 𝑔3𝜌𝑅𝜌3 =𝑔33𝑅33 = 𝑔22sin2𝜃 𝑅22sin2𝜃 =𝑔22𝑅22 = 𝑅22 (51)

続いて非対角成分であるが、計量テンソル 𝑔𝜇𝜈 もリッチテンソル 𝑅𝜇𝜈 も非対角成分はすべて0なので、 𝜇 ≠ 𝜈 の場合は 𝜌 が何であろうと 𝑔𝜇𝜌 と 𝑅𝜌𝜈 のどちらか一方は必ず0であるから 𝑅𝜇𝜈 = 𝑔𝜇𝜌𝑅𝜌𝜈 も非対角成分はすべて0である。

以上でリッチテンソル 𝑅𝜇𝜈 の表式が求まった。

スカラー曲率

スカラー曲率(リッチスカラー) 𝑅 の定義は 𝑅 = 𝑔𝜇𝜈𝑅𝜇𝜈 =𝑅𝜈𝜈 であるから、(48)〜(51)式を代入して計算すると次のようになる。 𝑅 = 𝑅𝜈𝜈 = 𝑅00+ 𝑅11+ 𝑅22+ 𝑅33 = 𝑅00+ 𝑅11+ 𝑅22+ 𝑅22 = 𝑅00+ 𝑅11+ 2𝑅22 = ( 𝐴2𝐴𝐵 + 𝐴𝐵4𝐴𝐵2 𝐴𝐴𝐵𝑟 +𝐴24𝐴2𝐵 ) + ( 𝐴2𝐴𝐵 +𝐴24𝐴2𝐵 + 𝐴𝐵4𝐴𝐵2 +𝐵𝐵2𝑟 ) +2 ( 1𝐵𝑟2 +𝐵2𝐵2𝑟 +1𝑟2 𝐴2𝐴𝐵𝑟 ) = 𝐴2𝐴𝐵 + 𝐴𝐵4𝐴𝐵2 𝐴𝐴𝐵𝑟 +𝐴24𝐴2𝐵 𝐴2𝐴𝐵 +𝐴24𝐴2𝐵 + 𝐴𝐵4𝐴𝐵2 +𝐵𝐵2𝑟 2𝐵𝑟2 +𝐵𝐵2𝑟 +2𝑟2 𝐴𝐴𝐵𝑟 = 𝐴𝐴𝐵 + 𝐴𝐵2𝐴𝐵2 2𝐴𝐴𝐵𝑟 +𝐴22𝐴2𝐵 +2𝐵𝐵2𝑟 2𝐵𝑟2 +2𝑟2

アインシュタインテンソル

アインシュタインテンソル 𝐺𝜇𝜈 の定義は 𝐺𝜇𝜈= 𝑅𝜇𝜈 12𝛿𝜇𝜈𝑅 (52) である。 𝛿𝜇𝜈 はクロネッカーのデルタである。では各成分の表式を求めよう。

まず対角成分は次のようになる。 𝐺00 = 𝑅00 12𝛿00𝑅 = ( 𝐴2𝐴𝐵 + 𝐴𝐵4𝐴𝐵2 𝐴𝐴𝐵𝑟 +𝐴24𝐴2𝐵 ) 12 ( 𝐴𝐴𝐵 + 𝐴𝐵2𝐴𝐵2 2𝐴𝐴𝐵𝑟 +𝐴22𝐴2𝐵 +2𝐵𝐵2𝑟 2𝐵𝑟2 +2𝑟2 ) = 𝐴2𝐴𝐵 + 𝐴𝐵4𝐴𝐵2 𝐴𝐴𝐵𝑟 +𝐴24𝐴2𝐵 +𝐴2𝐴𝐵 𝐴𝐵4𝐴𝐵2 +𝐴𝐴𝐵𝑟 𝐴24𝐴2𝐵 𝐵𝐵2𝑟 +1𝐵𝑟2 1𝑟2 = 𝐵𝐵2𝑟 +1𝐵𝑟2 1𝑟2 𝐺11 = 𝑅11 12𝛿11𝑅 = ( 𝐴2𝐴𝐵 +𝐴24𝐴2𝐵 + 𝐴𝐵4𝐴𝐵2 +𝐵𝐵2𝑟 ) 12 ( 𝐴𝐴𝐵 + 𝐴𝐵2𝐴𝐵2 2𝐴𝐴𝐵𝑟 +𝐴22𝐴2𝐵 +2𝐵𝐵2𝑟 2𝐵𝑟2 +2𝑟2 ) = 𝐴2𝐴𝐵 +𝐴24𝐴2𝐵 + 𝐴𝐵4𝐴𝐵2 +𝐵𝐵2𝑟 +𝐴2𝐴𝐵 𝐴𝐵4𝐴𝐵2 +𝐴𝐴𝐵𝑟 𝐴24𝐴2𝐵 𝐵𝐵2𝑟 +1𝐵𝑟2 1𝑟2 = 𝐴𝐴𝐵𝑟 +1𝐵𝑟2 1𝑟2 𝐺22 = 𝑅22 12𝛿22𝑅 = ( 1𝐵𝑟2 +𝐵2𝐵2𝑟 +1𝑟2 𝐴2𝐴𝐵𝑟 ) 12 ( 𝐴𝐴𝐵 + 𝐴𝐵2𝐴𝐵2 2𝐴𝐴𝐵𝑟 +𝐴22𝐴2𝐵 +2𝐵𝐵2𝑟 2𝐵𝑟2 +2𝑟2 ) = 1𝐵𝑟2 +𝐵2𝐵2𝑟 +1𝑟2 𝐴2𝐴𝐵𝑟 +𝐴2𝐴𝐵 𝐴𝐵4𝐴𝐵2 +𝐴𝐴𝐵𝑟 𝐴24𝐴2𝐵 𝐵𝐵2𝑟 +1𝐵𝑟2 1𝑟2 = 𝐴2𝐴𝐵 𝐴𝐵4𝐴𝐵2 +𝐴2𝐴𝐵𝑟 𝐴24𝐴2𝐵 𝐵2𝐵2𝑟 𝐺33 = 𝑅33 12𝛿33𝑅 = 𝑅22 12𝛿22𝑅 =𝐺22

続いて非対角成分であるが、リッチテンソル 𝑅𝜇𝜈 もクロネッカーのデルタ 𝛿𝜇𝜈 も非対角成分はすべて0なので、アインシュタインテンソル 𝐺𝜇𝜈 も非対角成分はすべて0である。

方程式の完成

ここまででアインシュタインテンソル 𝐺𝜇𝜈 を未知関数 𝐴 と 𝐵 で表すことができたので、これらを(3)式に代入すれば方程式が完成する。対角成分は次のようになる。 𝐺00 = 𝐵𝐵2𝑟 +1𝐵𝑟2 1𝑟2 =0 (53) 𝐺11 = 𝐴𝐴𝐵𝑟 +1𝐵𝑟2 1𝑟2 =0 (54) 𝐺22= 𝐺33 = 𝐴2𝐴𝐵 𝐴𝐵4𝐴𝐵2 +𝐴2𝐴𝐵𝑟 𝐴24𝐴2𝐵 𝐵2𝐵2𝑟 =0 (55) そして非対角成分は 0 = 0 となり何もしなくても最初から成り立っている。したがって(53)〜(55)式から成る連立方程式を解けばよいことになる。

⛭ 数式の表示設定 (S)