一様・等方な時空の方程式とその真空解(3)

第3章 フリードマン方程式の真空解

第2章で一様・等方な時空が満たすべき重力場の方程式を求めた。それは 第(0, 0)成分: 3𝑎˙2𝑎2 3𝑘𝑎2 +𝛬 = 8𝜋𝐺𝑐2𝜌 (54) 第(1, 1), (2, 2), (3, 3)成分: 2𝑎¨𝑎 𝑎˙2𝑎2 𝑘𝑎2 +𝛬 = 8𝜋𝐺𝑐4𝑝 (55) であり、フリードマン方程式と呼ぶのだった。

たいていの本では、フリードマン方程式を導いたら次は 𝜌 と 𝑝 の関係をうまく仮定して現実の宇宙に合うようなモデルを考えて、その仮定の下で方程式を解く手順に進んでいく。だが、その話は長くなるのでいつか気が向いたらやることにして、この記事では最も単純な例として 𝜌 = 0, 𝑝 = 0 とした真空の場合の厳密解のみを求める。そんな解は現実の宇宙に当てはめられないから興味がないという人もいるかもしれないが、この解からは意外なおもしろい知見が得られるのでやって損はないと思う。それに現実の宇宙は加速膨張しているのだから将来は中身がどんどん薄まって真空とほとんど変わらない状況になるかもしれないではないか。

3.1 解くべき方程式

真空の場合、 𝜌 = 0, 𝑝 = 0 を(54)・(55)式に代入すると、 3𝑎˙2𝑎2 3𝑘𝑎2 +𝛬 =0 (56) 2𝑎¨𝑎 𝑎˙2𝑎2 𝑘𝑎2 +𝛬 =0 (57) のようになる。3個あった未知関数のうち2個が消えて、残るは 𝑎 だけである。しかし式は2個ある。この連立方程式に解は存在するのだろうか。(56)式が満たされているときに(57)式がどうなるか考えてみよう。(56)式より、 3𝑎˙2𝑎2 3𝑘𝑎2 +𝛬 = 0 𝑎˙2𝑎2 𝑘𝑎2 +13𝛬 = 0 (58) 𝑎˙2𝑎2 𝑘𝑎2 = 13𝛬 (59) である。また、(58)式より 𝑎˙2 𝑘 +13𝛬𝑎2 = 0 (58)式の両辺を𝑎²倍した。 2𝑎˙𝑎¨ +23𝛬𝑎𝑎˙ = 0 ←𝑤で微分した。 𝑎˙ (2𝑎¨+23𝛬𝑎) = 0 であるから、もし 𝑎˙=0 でなければ 2𝑎¨+23𝛬𝑎=0 (60) である。このとき、 (57)式の左辺 = 2𝑎¨𝑎 𝑎˙2𝑎2 𝑘𝑎2 +𝛬 = 2𝑎¨𝑎13𝛬+𝛬 (59)式を代入した。 = 2𝑎¨𝑎+23𝛬 = 1𝑎 (2𝑎¨+23𝛬𝑎) =0 (60)式を代入した。 となって0になるので、(57)式も成り立っている。ただし 𝑎˙=0 だった場合はこの限りではない。

すなわち、(56)式を解いて出てきた解が、もし 𝑎˙=0 でなければ自動的に(57)式をも満たすので改めて(57)式のことを考える必要はないが、 𝑎˙=0 だったらそうとは言えないので別途(57)式を確認する必要がある、ということである。このことを意識しながら(56)式を解いていこう。

3.2 方程式を解く

(56)式より、 3𝑎˙2𝑎2 3𝑘𝑎2 +𝛬 = 0 3𝑎˙2𝑎2 = 3𝑘𝑎2𝛬 𝑎˙2 = 𝑘+𝛬3𝑎2 𝑎˙ = ±𝑘+𝛬3𝑎2 (61) である。ここからは宇宙定数 𝛬 と空間の曲率 𝑘 の符号によって場合分けがいる。

[ⅰ] 𝛬 < 0 のとき

(ⅰ‐a) 𝛬 < 0, 𝑘 < 0 のとき

この先 3𝛬 が何度も出てくるので、 𝐿=3𝛬 と置く。(61)式より、 𝑎˙ = ±𝑘+𝛬3𝑎2 = ±𝑘𝛬3𝑎2 = ±𝑘𝑎2𝐿2 = ±𝑘 1𝑎2𝑘𝐿2 ± 𝑎˙ 𝑘 1𝑎2𝑘𝐿2 = 1 ± 𝑎˙ 𝑘 1𝑎2𝑘𝐿2 d𝑤 = d𝑤 𝐿arccos𝑎𝑘𝐿 = 𝑤𝑤𝑐 𝑤𝑐は積分定数) arccos𝑎𝑘𝐿 = 𝑤𝑤𝑐𝐿 𝑎𝑘𝐿 = cos𝑤𝑤𝑐𝐿 𝑎 = 𝑘𝐿cos𝑤𝑤𝑐𝐿 となる。これは時刻 𝑤=𝑤𝑐𝜋2𝐿 に大きさ0から始まって減速膨張し、時刻 𝑤=𝑤𝑐 に大きさが最大になって加速収縮に転じ、時刻 𝑤=𝑤𝑐+𝜋2𝐿 に大きさ0になって終わる宇宙であるように見える。

(ⅰ‐b) 𝛬 < 0, 𝑘 ≧ 0 のとき

解はない。

[ⅱ] 𝛬 = 0 のとき

(ⅱ‐a) 𝛬 = 0, 𝑘 < 0 のとき

(61)式より、 𝑎˙=±𝑘 𝑎˙d𝑤 = ±𝑘d𝑤 𝑎 = ±𝑘(𝑤𝑤𝑐) 𝑤𝑐は積分定数) となる。複号が正の解は、時刻 𝑤=𝑤𝑐 に大きさ0から始まって等速膨張し、無限の未来に大きさ∞になる宇宙であるように見える。複号が負の解は、無限の過去に大きさ∞だったものが等速収縮し、時刻 𝑤=𝑤𝑐 に大きさ0になって終わる宇宙であるように見える。

(ⅱ‐b) 𝛬 = 0, 𝑘 = 0 のとき

(61)式より、 𝑎˙=0 𝑎 = 𝑎𝑐 𝑎𝑐は正の積分定数) となる。前節の最後に書いたように、(56)式を解いて出てきた解が 𝑎˙=0 だったときは(57)式も確認しなければならないので(57)式に代入すると、今は 𝑘 も 𝛬 も0だから成り立っていることがわかる。したがってこれは解である。これは無限の過去から無限の未来まで定常な宇宙であるように見える。

(ⅱ‐c) 𝛬 = 0, 𝑘 > 0 のとき

解はない。

[ⅲ] 𝛬 > 0 のとき

この先 3𝛬 が何度も出てくるので、 𝐿=3𝛬 と置く。(61)式より、 𝑎˙ = ±𝑘+𝛬3𝑎2 = ±𝑘+𝑎2𝐿2 = ±𝑎2𝐿2𝑘 (62) である。

(ⅲ‐a) 𝛬 > 0, 𝑘 < 0 のとき

(62)式より 𝑎˙ = ±𝑎2𝐿2𝑘 = ±𝑘 𝑎2𝑘𝐿2+1 ± 𝑎˙ 𝑘 𝑎2𝑘𝐿2+1 = 1 ± 𝑎˙ 𝑘 𝑎2𝑘𝐿2+1 d𝑤 = d𝑤 ±𝐿arsinh𝑎𝑘𝐿 = 𝑤𝑤𝑐 𝑤𝑐は積分定数) arsinh𝑎𝑘𝐿 = ±𝑤𝑤𝑐𝐿 𝑎𝑘𝐿 = ±sinh𝑤𝑤𝑐𝐿 𝑎 = ±𝑘𝐿sinh𝑤𝑤𝑐𝐿 となる。複号が正の解は、時刻 𝑤=𝑤𝑐 に大きさ0から始まって加速膨張し、無限の未来に大きさ∞になる宇宙であるように見える。複号が負の解は、無限の過去に大きさ∞だったものが減速収縮し、時刻 𝑤=𝑤𝑐 に大きさ0になって終わる宇宙であるように見える。

(ⅲ‐b) 𝛬 > 0, 𝑘 = 0 のとき

(62)式より 𝑎˙ = ±𝑎2𝐿2 =±𝑎𝐿 ±𝐿𝑎˙𝑎=1 ±𝐿𝑎˙𝑎d𝑤 = d𝑤 ±𝐿log𝑎 = 𝑤𝑤𝑐 𝑤𝑐は積分定数) log𝑎 = ±𝑤𝑤𝑐𝐿 𝑎 = exp(±𝑤𝑤𝑐𝐿) となる。複号が正の解は、無限の過去に大きさ0だったものが加速膨張し、無限の未来に大きさ∞になる宇宙であるように見える。複号が負の解は、無限の過去に大きさ∞だったものが減速収縮し、無限の未来に大きさ0になる宇宙であるように見える。

(ⅲ‐c) 𝛬 > 0, 𝑘 > 0 のとき

(62)式より 𝑎˙ = ±𝑎2𝐿2𝑘 = ± 𝑘𝑎2𝑘𝐿21 ± 𝑎˙ 𝑘𝑎2𝑘𝐿21 = 1 ± 𝑎˙ 𝑘𝑎2𝑘𝐿21 d𝑤 = d𝑤 ±𝐿arcosh𝑎𝑘𝐿 = 𝑤𝑤𝑐 𝑤𝑐は積分定数) arcosh𝑎𝑘𝐿 = ±𝑤𝑤𝑐𝐿 𝑎𝑘𝐿 = cosh𝑤𝑤𝑐𝐿 𝑎 = 𝑘𝐿cosh𝑤𝑤𝑐𝐿 となる。これは無限の過去に大きさ∞だったものが減速収縮し、時刻 𝑤=𝑤𝑐 に大きさが最小になって加速膨張に転じ、無限の未来に大きさ∞になる宇宙であるように見える。

解のまとめ

以上で出てきた解をまとめると、表1のようになる。ただし (ⅰ‐a), (ⅱ‐a), [ⅲ] の各解で現れた積分定数 𝑤𝑐 には時間座標 𝑤 の原点をずらす効果しかなくて、時空の実体は変わらないから、 𝑤𝑐 = 0 とした。また、 (ⅱ‐b) の解で現れた積分定数 𝑎𝑐 には動径座標 𝑟 のスケールを定数倍する効果しかなくて、時空の実体は変わらないから、 𝑎𝑐 = 1 とした。空欄のところは該当する解がない。

表1. フリードマン方程式の真空解のスケール因子 𝑎(𝑤) 
3次元空間の曲率 𝑘
𝑘 < 0
(超擬球面)
𝑘 = 0
(平坦)
𝑘 > 0
(超球面)




𝛬
𝛬 < 0 𝑎=𝑘𝐿cos𝑤𝐿 ただし 𝐿=3𝛬
𝛬 = 0 𝑎=±𝑘𝑤 𝑎=1
𝛬 > 0 𝑎=±𝑘𝐿sinh𝑤𝐿 𝑎=exp(±𝑤𝐿) 𝑎=𝑘𝐿cosh𝑤𝐿 ただし 𝐿=3𝛬

このように、真空で一様・等方な時空の計量は6種類(複号を区別すれば9種類)の解が存在する。表1の対角線上の欄にある3個の解は時間反転に対して対称である。それ以外の解は複号が正なら 𝑎 が時間とともに増加し負なら 𝑎 が時間とともに減少する。

しかし話はこれで終わらない。表1の解は物理的に同じ解が座標系の張り方の違いのせいで異なる形に見えているものがあり、解の種類は本当はもっと少ないのだ。この話の続きは別の記事「ドジッター時空の座標変換と5次元への埋め込み」で扱うことにする。

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