この記事の目的は、一様・等方な時空に対する重力場の方程式を求めることだった。第1章では一様・等方な時空の計量の一般的な形を求めた。それを重力場の方程式(アインシュタイン方程式)に代入したらどうなるかやってみよう。
重力場の方程式はいつものように混合テンソルによる方程式
クリストッフェル記号の0でない成分はすでに第1章の最後の方で(25)式
この後でリッチテンソルを求める際にクリストッフェル記号の微分が必要になるので計算しておく。ただし
リーマンテンソル 𝑅𝜌𝜇𝜆𝜈 およびリッチテンソル 𝑅𝜇𝜈 の定義は
ではリッチテンソルの各成分の表式を求めよう。(31)式を使って、(25)・(28)式と見比べながら0でない成分を代入していくだけである。この下の式変形では、添え字に具体的な数字(0〜3)を代入する段階で、項の値が0でないものだけを残すようにしている。クリストッフェル記号の縮約 𝛤𝜆𝜇𝜆 を求める公式を知っている人は使いたくなるかもしれないが、今あれを使うとかえって繁雑になってめんどくさいのでやめた方がよいと思う。
まず対角成分は、
以上でリッチテンソル 𝑅𝜇𝜈 の表式が求まった。
次に、1個目の添え字を上にあげた 𝑅𝜇𝜈 = 𝑔𝜇𝜌𝑅𝜌𝜈 を計算する。(13)式と(32)〜(41)式を代入すればよい。
まず対角成分は次のようになる。
続いて非対角成分であるが、計量テンソル 𝑔𝜇𝜈 もリッチテンソル 𝑅𝜇𝜈 も非対角成分はすべて0なので、 𝑅𝜇𝜈 = 𝑔𝜇𝜌𝑅𝜌𝜈 も非対角成分はすべて0である。
以上でリッチテンソル 𝑅𝜇𝜈 の表式が求まった。
スカラー曲率(リッチスカラー) 𝑅 の定義は
アインシュタインテンソル 𝐺𝜇𝜈 の定義は
まず対角成分は次のようになる。
続いて非対角成分であるが、リッチテンソル 𝑅𝜇𝜈 もクロネッカーのデルタ 𝛿𝜇𝜈 も非対角成分はすべて0なので、アインシュタインテンソル 𝐺𝜇𝜈 も非対角成分はすべて0である。
ここまででアインシュタインテンソル 𝐺𝜇𝜈 の各成分の表式が求まったので、それらを(27)式に代入すれば、
右辺についてはまだ何の条件も考えていなかったが、(47)〜(49)式からエネルギー運動量テンソル 𝑇𝜇𝜈 に条件が課されることがわかる。その条件とは非対角成分が0であることと、 𝑇¹₁ = 𝑇²₂ = 𝑇³₃ である。それと左辺は時間座標 𝑤 の関数であるから、右辺の 𝑇𝜇𝜈 も 𝑤 の関数である。したがって
ところで話は変わるが、一般に完全流体のエネルギー運動量テンソルは
ただし今後の説明の都合上、ここでは質量密度 𝜌 の代わりにエネルギー密度 𝜀 を使うことにする。質量とエネルギーは等価であり 𝜀 = 𝜌𝑐² だから値が 𝑐² 倍違うだけで式の意味は同じであり、(53)式は
このページでやったことを改めて振り返っておこう。重力場の方程式の一般的な形である(27)式の左辺に、一様・等方な時空の計量であるFLRW計量を代入したものが、(47)〜(49)式である。そしてこれらに矛盾しないようなエネルギー運動量テンソルとして(54)式を採用して右辺に代入したものが、(55)・(56)式である。一様・等方な時空は(55)・(56)式を満たすはずだ。