球対称で定常な時空の計量の導出(3)

1.4 天体の内部のみで成り立つ表式

TOV方程式(31)式を変形すると、 𝑝 = 𝐺 (4𝜋𝑝𝑟3+𝑐2𝑚) (𝑝+𝑐2𝜌) 𝑐2𝑟(𝑐2𝑟2𝐺𝑚) (31)式 = 𝐺𝑐2 (4𝜋𝑝𝑟3𝑐2+𝑚) (𝑝+𝑐2𝜌) 𝑐4𝑟2 (12𝐺𝑚𝑐2𝑟) = 𝐺𝑐2 (4𝜋𝑝𝑟3𝑐2+𝑚) (𝑝+𝑐2𝜌) 𝑟2 (12𝐺𝑚𝑐2𝑟) (35) = 2𝐺𝑐2 4𝜋𝑝𝑟3𝑐2+𝑚 𝑟2 (12𝐺𝑚𝑐2𝑟) 𝑝+𝑐2𝜌2 (36) のようになる。(36)式の右辺には(23)式の右辺と同じ部品が含まれているので、そこに(23)式を代入すると、 𝑝= 𝐴𝐴 𝑝+𝑐2𝜌2 (37) となる。天体の外部では 𝑝 = 𝜌 = 0 であるから(37)式は 𝐴 にかかわらず成り立っている。天体の内部では(37)式 𝐴𝐴 𝑝+𝑐2𝜌2 = 𝑝 𝐴𝐴 = 2𝑝𝑝+𝑐2𝜌 𝐴𝐴d𝑟 = 2𝑝𝑝+𝑐2𝜌d𝑟 log|𝐴| = 2d𝑝𝑝+𝑐2𝜌 𝐴 = exp (2d𝑝𝑝+𝑐2𝜌) (38) のようになる。すでに(24)式で 𝐴 の表式は求まっているが、TOV方程式があるおかげで天体の内部では(24)式でも(38)式でも同じだということである。(38)式で 𝐴 を正とした理由や、正の定数倍の任意性があることは、(24)式のときと同様である。

天体の内部では 𝜌 > 0 であるから(35)式をさらに変形すると、 𝑝 = 𝐺𝑐2 (4𝜋𝑝𝑟3𝑐2+𝑚) (𝑝+𝑐2𝜌) 𝑟2 (12𝐺𝑚𝑐2𝑟) (35)式 = 𝐺𝑐2 𝑚 ( 4𝜋𝑝𝑟3𝑐2𝑚+1 ) 𝑐2𝜌(𝑝𝑐2𝜌+1) 𝑟2 (12𝐺𝑚𝑐2𝑟) = 𝐺𝑚𝜌𝑟2 ( 1+4𝜋𝑝𝑟3𝑐2𝑚 ) (1+𝑝𝑐2𝜌) (12𝐺𝑚𝑐2𝑟) (39) のようになる。この形をTOV方程式と呼ぶこともある。非相対論的極限では、 𝑚(𝑟) は半径 𝑟 以下の部分の質量になり、(39)式は右辺の3つの括弧内の第2項をそれぞれ無視できるので 𝑝=𝐺𝑚𝜌𝑟2 となり、TOV方程式はニュートン力学の静水圧平衡の式に帰着する。

1.5 TOV方程式を導く別の方法

ひとまず1.3節で重力場の方程式から解を導出できたが、TOV方程式(31)式は別の方法で導くこともできるのでそれを紹介する。それはエネルギー運動量保存則の式を使う方法である。

エネルギー運動量保存則を使う

重力場の方程式(1)式にはエネルギー運動量保存則 𝜇𝑇𝜆𝜇=0(40) が含まれている。「含まれている」とは、重力場の方程式の解であれば自動的に(40)式をも満たしている、という意味である。では(40)式からどのような関係が得られるだろうか。

ただし今は混合テンソルを使っているので(40)式を次のように変形しておく。 𝜇𝑇𝜆𝜇 = 0 (40)式 𝜇𝑇𝜇𝜆 = 0 𝑇𝜆𝜇は対称テンソルだから。 𝑔𝜆𝜈𝜇𝑇𝜇𝜆 = 0 𝜇 (𝑔𝜆𝜈𝑇𝜇𝜆) = 0 𝑔𝜆𝜈の共変微分は0だから。 𝜇𝑇𝜇𝜈 = 0 (41) (41)式は 𝜈 = 0, 1, 2, 3 に対する4個の方程式である。共変微分の定義より、(41)式の左辺は 𝜇𝑇𝜇𝜈= 𝜇𝑇𝜇𝜈 + 𝛤𝜇𝜎𝜇 𝑇𝜎𝜈 𝛤𝜎𝜈𝜇 𝑇𝜇𝜎 (42) であるから、これの具体的な表式を求めればよい。エネルギー運動量テンソルの表式は1.2節 (𝑇𝜇𝜈)= ( 𝑐2𝜌000 0𝑝00 00𝑝0 000𝑝 ) (10)式 のように決めたのでこれを使う。クリストッフェル記号は1.2節(4)式の計量テンソルから(6)〜(8)式のアインシュタインテンソルの表式を求める過程で計算したはずである。ただしそのページには「計算過程はシュバルツシルト(外部解)の記事を見てもらうこととしてここでは結果だけを書く」と書いてあり計算過程が省略されているので、「シュバルツシルト解(外部解)の導出」の記事の(24)式まで遡って見てみると、クリストッフェル記号の0でない成分は 𝛤100= 𝐴2𝐵 , 𝛤010= 𝛤001= 𝐴2𝐴 , 𝛤111= 𝐵2𝐵 , 𝛤212= 𝛤221= 1𝑟 , 𝛤313= 𝛤331= 1𝑟 , 𝛤122= 𝑟𝐵 , 𝛤323= 𝛤332= cot𝜃 , 𝛤133= 𝑟𝐵sin2𝜃 , 𝛤233 = sin𝜃cos𝜃 (43) のようになっているからこれを使えばよい。(10)(43)式(42)式に代入すると、 𝜇𝑇𝜇0 = 𝜇𝑇𝜇0 + 𝛤𝜇𝜎𝜇 𝑇𝜎0 𝛤𝜎0𝜇 𝑇𝜇𝜎 =0+00 =0 𝜇𝑇𝜇1 = 𝜇𝑇𝜇1 + 𝛤𝜇𝜎𝜇 𝑇𝜎1 𝛤𝜎1𝜇 𝑇𝜇𝜎 = 1𝑇11 + ( 𝛤010+ 𝛤111+ 𝛤212+ 𝛤313 ) 𝑇11 ( 𝛤010 𝑇00 + 𝛤111 𝑇11 + 𝛤212 𝑇22 + 𝛤313 𝑇33 ) = 1𝑇11 + 𝛤010 ( 𝑇11 𝑇00 ) + 𝛤212 ( 𝑇11 𝑇22 ) + 𝛤313 ( 𝑇11 𝑇33 ) = ∂𝑝∂𝑟+ 𝐴2𝐴 {𝑝(𝑐2𝜌)} +1𝑟(𝑝𝑝) +1𝑟(𝑝𝑝) = 𝑝+ 𝐴2𝐴 (𝑝+𝑐2𝜌) 𝜇𝑇𝜇2 = 𝜇𝑇𝜇2 + 𝛤𝜇𝜎𝜇 𝑇𝜎2 𝛤𝜎2𝜇 𝑇𝜇𝜎 = 0 + 𝛤323 𝑇22 𝛤323 𝑇33 =(cot𝜃)𝑝(cot𝜃)𝑝 =0 𝜇𝑇𝜇3 = 𝜇𝑇𝜇3 + 𝛤𝜇𝜎𝜇 𝑇𝜎3 𝛤𝜎3𝜇 𝑇𝜇𝜎 =0+00 =0 となる。上の式変形では、添え字に具体的な数字(0〜3)を代入する段階で、項の値が0でないものだけを残すようにしている。これらを(41)式に代入すると、第1成分は 𝑝+ 𝐴2𝐴 (𝑝+𝑐2𝜌) =0 (44) のようになる。第0, 2, 3成分は 0 = 0 となり何もしなくても最初から成り立っている。(44)式より、 𝑝 = 𝐴2𝐴 (𝑝+𝑐2𝜌) (45) という式が得られる。(45)式は1.4節で導かれた(37)式と同じである。ここまではエネルギー運動量保存則の式を使っただけで、重力場の方程式はまだ使っていない。

重力場の方程式の一部を使う

1.3節で重力場の方程式の第(0, 0)成分と第(1, 1)成分を使って(23)式が得られたのだった。それを(45)式に代入すると、 𝑝 = 12 2𝐺𝑐2 4𝜋𝑝𝑟3𝑐2+𝑚 𝑟2 (12𝐺𝑚𝑐2𝑟) (𝑝+𝑐2𝜌) = 𝐺 (4𝜋𝑝𝑟3𝑐2+𝑚) 𝑐2𝑟 (𝑟2𝐺𝑚𝑐2) (𝑝+𝑐2𝜌) = 𝐺 (4𝜋𝑝𝑟3+𝑐2𝑚) (𝑝+𝑐2𝜌𝑐) 𝑐2𝑟(𝑐2𝑟2𝐺𝑚) となる。これは(31)式とまったく同じ式である。

1.3節では、重力場の方程式の第(2, 2), (3, 3)成分である(13)式から、(23)(22)式を使って 𝐴 と 𝐵 を消去して、延々と計算した結果(31)式が出てきたのだった。エネルギー運動量保存則を使えばそれと同じ結果がより簡単な計算で出てくるのだ。

だったら重力場の方程式(11)〜(13)式を解いて球対称で定常な時空の計量を求めるには、(13)式を使わないで代わりにエネルギー運動量保存則を使えば楽に解を求められると思うかもしれないが、そう気軽に言えるものでもない。というのは、エネルギー運動量保存則は重力場の方程式を満たすための必要条件であるが、十分条件ではないからだ。だからこの方法で解の候補が見つかったとしても、それが(13)式をも満たしているかどうかは別途確認する必要がある。直接代入して確認するか別の理屈で証明するかはともかく、最初から無条件で(13)式を無視していいものではないのだ。

それならこの節のやり方は今の問題に対してどう役立つのだろうか。たぶん、すでにやり方を知っているけれど答えだけ忘れてしまった場合に、簡単な計算で答えを思い出せるということだろう。

⛭ 数式の表示設定 (S)