シュバルツシルト解(内部解)の導出(4)

第2章 内部解と外部解の接続

2.1 外部解と接続した内部解の表式

第1章で求めた内部解の一般解は (𝑔𝜇𝜈)= ( 3𝑏 ( 3 1 8𝜋𝐺𝜌𝑐𝑟𝑐2 3𝑐2 1 8𝜋𝐺𝜌𝑐𝑟2 3𝑐2 ) 2 0 0 0 0 1 1 8𝜋𝐺𝜌𝑐𝑟2 3𝑐2 0 0 00𝑟20 000𝑟2sin2𝜃 ) (30)式 𝑝= 𝑐2𝜌𝑐 1 8𝜋𝐺𝜌𝑐𝑟23𝑐2 1 8𝜋𝐺𝜌𝑐𝑟𝑐2 3𝑐2 3 1 8𝜋𝐺𝜌𝑐𝑟𝑐2 3𝑐2 1 8𝜋𝐺𝜌𝑐𝑟23𝑐2 (31)式 ただし 𝑟𝑐< 𝑐3𝜋𝐺𝜌𝑐 あるいは 𝜌𝑐< 𝑐23𝜋𝐺𝑟𝑐2 (32)式 である(𝑏 は積分定数)。一方、外部解は、「シュバルツシルト解(外部解)の導出」の記事の2.3節の最後の方で求めたように、 (𝑔𝜇𝜈)= ( (1𝑟𝑠𝑟) 0 0 0 0 11𝑟𝑠𝑟 0 0 00𝑟20 000𝑟2sin2𝜃 ) であった(𝑟𝑠 は積分定数)。両者を同一の座標系で扱うことを考えてみる。そのためには天体の表面 𝑟 = 𝑟𝑐 において両者の解が一致するように定数を選べばよい。すなわち 𝑔00(𝑟𝑐)= 3𝑏 ( 3 1 8𝜋𝐺𝜌𝑐𝑟𝑐2 3𝑐2 1 8𝜋𝐺𝜌𝑐𝑟𝑐2 3𝑐2 ) 2 = (1𝑟𝑠𝑟𝑐) (39) 𝑔11(𝑟𝑐)= 1 1 8𝜋𝐺𝜌𝑐𝑟𝑐2 3𝑐2 = 11𝑟𝑠𝑟𝑐 (40) である。(40)式より、 1 1 8𝜋𝐺𝜌𝑐𝑟𝑐2 3𝑐2 = 11𝑟𝑠𝑟𝑐 1𝑟𝑠𝑟𝑐 = 1 8𝜋𝐺𝜌𝑐𝑟𝑐2 3𝑐2 8𝜋𝐺𝜌𝑐𝑟𝑐2 3𝑐2 = 𝑟𝑠𝑟𝑐 𝜌𝑐 = 3𝑐2𝑟𝑠 8𝜋𝐺𝑟𝑐3 (41) という関係が求まる。このため 𝜌𝑐 と 𝑟𝑐 と 𝑟𝑠 は独立ではなく、2個を決めれば残りの1個は自動的に決まることになる。そして(39)式 3𝑏 ( 3 1 8𝜋𝐺𝜌𝑐𝑟𝑐2 3𝑐2 1 8𝜋𝐺𝜌𝑐𝑟𝑐2 3𝑐2 ) 2 = (1𝑟𝑠𝑟𝑐) 3𝑏 ( 2 1 8𝜋𝐺𝜌𝑐𝑟𝑐2 3𝑐2 ) 2 = (1𝑟𝑠𝑟𝑐) 3𝑏 (21𝑟𝑠𝑟𝑐)2 = (1𝑟𝑠𝑟𝑐) (41)式を代入した。 3𝑏 4(1𝑟𝑠𝑟𝑐) = (1𝑟𝑠𝑟𝑐) (112𝑏) (1𝑟𝑠𝑟𝑐) = 0 である。ここで 𝑟𝑠 = 𝑟𝑐 だとすれば(41)式より 𝜌𝑐= 3𝑐28𝜋𝐺𝑟𝑐2 となるがこれは(32)式の条件を満たさないので不適である。したがって、 112𝑏=0 𝑏=112 (42) となって積分定数 𝑏 の値が定まる。

以上により、(41)(42)式(30)〜(32)式に代入すれば外部解と接続した内部解は (𝑔𝜇𝜈)= ( 14 ( 31𝑟𝑠𝑟𝑐 1 𝑟𝑠𝑟2𝑟𝑐3 ) 2 0 0 0 0 1 1 𝑟𝑠𝑟2𝑟𝑐3 0 0 00𝑟20 000𝑟2sin2𝜃 ) (43) 𝑝= 𝑐2𝜌𝑐 1 𝑟𝑠𝑟2𝑟𝑐3 1𝑟𝑠𝑟𝑐 31𝑟𝑠𝑟𝑐 1 𝑟𝑠𝑟2𝑟𝑐3 (44) ただし𝑟𝑐>98𝑟𝑠 (45) という形で表される。(44)式の中に1か所だけ 𝜌𝑐 が残っているのが気に入らなければ(41)式を使って 𝜌𝑐 を消去してもよい(が式は少々繁雑になる)。ここで 𝑟𝑠 は(41)式より 𝑟𝑠= 8𝜋𝐺𝜌𝑐𝑟𝑐3 3𝑐2 (46) である。これによって外部解の積分定数の値も完全に決まった。以上でシュバルツシルト解(外部解・内部解)を導出する作業はすべて完了した。

2.2 天体の質量と大きさ

この節の内容は「解の導出」とは関係ないが、解の形からすぐにわかる重要なことなのでついでにここに書いておく。

質量欠損

(46)式の 𝑟𝑠 はもともとは外部解を導出したときに出てきた積分定数で、「シュバルツシルト半径」である。それは遠方でニュートン力学が成り立っていることを使うと 𝑟𝑠=2𝐺𝑀𝑐2 (47) と書けるのだった。 𝑀 はニュートン力学で天体の「質量」と呼んでいたものであるが、相対論的にどう定義されるかを考えると、(47)式(46)式を等置すれば 𝑀=43𝜋𝑟𝑐3𝜌𝑐 (48) であることがわかる。「半径 𝑟𝑐 の球の体積に密度 𝜌𝑐 を掛けたら質量になるのは当たり前ではないか。」と思った人がいるかもしれないがそうではない。平坦なユークリッド空間なら 43𝜋𝑟𝑐3 は球の体積だが、今考えているシュバルツシルト解のような曲がった時空では 43𝜋𝑟𝑐3 という量は体積とは違う何か別のものだ。

ではこの天体の本当の体積(固有体積)はいくらなのか、計算してみよう。それは 𝑥⁰ = 𝑤 = 一定 の断面で切り取ってきた3次元体積であるから、次のようにして求められる。 det は行列式である。 𝑉 = 𝑟<𝑟𝑐 det ( 𝑔11 𝑔12 𝑔13 𝑔21 𝑔22 𝑔23 𝑔31 𝑔32 𝑔33 ) d𝑥1d𝑥2d𝑥3 = 𝑟<𝑟𝑐 1 1 𝑟𝑠𝑟2𝑟𝑐3 𝑟2𝑟2sin2𝜃 d𝑟d𝜃d𝜑 = 𝑟<𝑟𝑐 𝑟2sin𝜃 1 𝑟𝑠𝑟2𝑟𝑐3 d𝑟d𝜃d𝜑 = 0𝑟𝑐 𝑟2 1 𝑟𝑠𝑟2𝑟𝑐3 d𝑟 0𝜋sin𝜃d𝜃 02𝜋d𝜑 (49) ここで 𝑟=𝑟𝑐3𝑟𝑠sin𝑥 とおくと d𝑟=𝑟𝑐3𝑟𝑠cos𝑥d𝑥 であるから、(49)式の 𝑟 に関する積分を 𝑥 で置換積分すればその値は、 0𝑟𝑐 𝑟2 1 𝑟𝑠𝑟2𝑟𝑐3 d𝑟 = 0arcsin𝑟𝑠𝑟𝑐 𝑟𝑐3𝑟𝑠sin2𝑥 1sin2𝑥 𝑟𝑐3𝑟𝑠cos𝑥d𝑥 = 𝑟𝑐3𝑟𝑠 𝑟𝑐3𝑟𝑠 0arcsin𝑟𝑠𝑟𝑐 sin2𝑥cos𝑥cos𝑥d𝑥 = 𝑟𝑐4𝑟𝑠 𝑟𝑐𝑟𝑠 0arcsin𝑟𝑠𝑟𝑐 sin2𝑥d𝑥 = 𝑟𝑐4𝑟𝑠 𝑟𝑐𝑟𝑠 0arcsin𝑟𝑠𝑟𝑐 1cos2𝑥2d𝑥 = 𝑟𝑐4𝑟𝑠 𝑟𝑐𝑟𝑠 [12𝑥14sin2𝑥] 0 arcsin𝑟𝑠𝑟𝑐 = 𝑟𝑐4𝑟𝑠 𝑟𝑐𝑟𝑠 [12𝑥12sin𝑥cos𝑥] 0 arcsin𝑟𝑠𝑟𝑐 = 𝑟𝑐4𝑟𝑠 𝑟𝑐𝑟𝑠 ( 12arcsin𝑟𝑠𝑟𝑐 12 𝑟𝑠𝑟𝑐 1𝑟𝑠𝑟𝑐 ) = 𝑟𝑐42𝑟𝑠 ( 𝑟𝑐𝑟𝑠 arcsin𝑟𝑠𝑟𝑐 1𝑟𝑠𝑟𝑐 ) である。そして(49)式の 𝜃 に関する積分の値が 2 になり 𝜑 に関する積分の値が 2𝜋 になることは見ればすぐにわかるだろう。これらを(49)式に代入すれば天体の固有体積は 𝑉 = 𝑟𝑐42𝑟𝑠 ( 𝑟𝑐𝑟𝑠 arcsin𝑟𝑠𝑟𝑐 1𝑟𝑠𝑟𝑐 ) 22𝜋 = 2𝜋𝑟𝑐4𝑟𝑠 ( 𝑟𝑐𝑟𝑠 arcsin𝑟𝑠𝑟𝑐 1𝑟𝑠𝑟𝑐 ) になる。この大きさの空間が一様密度 𝜌𝑐 の流体で満たされているのだから、流体要素が瞬間的に静止する局所慣性系で測った質量を全部足し合わせた合計の質量 𝑀𝑃 は 𝑀𝑃 = 𝑉𝜌𝑐 = 2𝜋𝑟𝑐4𝜌𝑐𝑟𝑠 ( 𝑟𝑐𝑟𝑠 arcsin𝑟𝑠𝑟𝑐 1𝑟𝑠𝑟𝑐 ) (50) である。(50)式(48)式の比は 𝑀𝑃𝑀 = 34𝜋𝑟𝑐3𝜌𝑐 2𝜋𝑟𝑐4𝜌𝑐𝑟𝑠 ( 𝑟𝑐𝑟𝑠 arcsin𝑟𝑠𝑟𝑐 1𝑟𝑠𝑟𝑐 ) = 3𝑟𝑐2𝑟𝑠 ( 𝑟𝑐𝑟𝑠 arcsin𝑟𝑠𝑟𝑐 1𝑟𝑠𝑟𝑐 ) (51) である。例えば 𝑟𝑐 = 10𝑟𝑠 なら 𝑀𝑃𝑀=1.03 であり、 𝑟𝑐 = 3𝑟𝑠 なら 𝑀𝑃𝑀=1.12 である。参考のため 𝑟𝑠 ≪ 𝑟𝑐 のときは(51)式を級数展開すると 𝑀𝑃𝑀 = 3𝑟𝑐2𝑟𝑠 ( 𝑟𝑐𝑟𝑠 arcsin𝑟𝑠𝑟𝑐 1𝑟𝑠𝑟𝑐 ) 3𝑟𝑐2𝑟𝑠 [ 𝑟𝑐𝑟𝑠 { 𝑟𝑠𝑟𝑐 + 16 (𝑟𝑠𝑟𝑐)3 + 340 (𝑟𝑠𝑟𝑐)5 } { 1 + 12(𝑟𝑠𝑟𝑐) 18 (𝑟𝑠𝑟𝑐)2 } ] = 3𝑟𝑐2𝑟𝑠 [ { 1+ 16𝑟𝑠𝑟𝑐+ 340 (𝑟𝑠𝑟𝑐)2 } { 1 12𝑟𝑠𝑟𝑐 18 (𝑟𝑠𝑟𝑐)2 } ] = 3𝑟𝑐2𝑟𝑠 { 23𝑟𝑠𝑟𝑐+ 15 (𝑟𝑠𝑟𝑐)2 } = 1+310𝑟𝑠𝑟𝑐 のように近似できる(近似だけが得られればよい場合は積分する前に(49)式の1個目の積分の被積分関数を級数展開する方が楽である)。これは1より大きい。

では 𝑀 の意味は何かといえば、詳しい説明は省くが、これは天体とそれが作る重力場の総エネルギー(を 𝑐² で割ったもの)を無限遠で測ったものということになっている。天体の外部の重力場の形は(47)式を通して 𝑀 によって特徴づけられるので 𝑀 を「重力質量」と呼ぶことがある。

また、 𝑀𝑃 には圧力に起因するエネルギー(を 𝑐² で割ったもの)も含まれているので、これは一般的に天体を構成する流体要素の静止質量の総和より大きい。

大きさの下限

(45)式の条件があるので、 𝑟𝑐 が 98𝑟𝑠 以下になるような定常状態は存在しない。この条件は圧力が発散しないための条件から出てきたものなので、これが満たされないときは、天体を平衡状態に保つために無限大の圧力が必要になるがそんな圧力は実現できないから崩壊してブラックホールになるしかない。

シュバルツシルト半径ぎりぎりで崩壊を免れている(球対称・定常・一様密度の)天体というものは存在しないのだ。

⛭ 数式の表示設定 (S)