ライスナー・ノルドシュトルム解の導出(2)

1.3 方程式を解く

1.2節の最後でできあがった(15)〜(17)式を解く。方程式をもう一度書いておくと、 第(0, 0)成分: 𝐵𝐵2𝑟 +1𝐵𝑟2 1𝑟2 = 4𝜋𝐺𝜀0𝐸2 𝑐4𝐴𝐵 (15) 第(1, 1)成分: 𝐴𝐴𝐵𝑟 +1𝐵𝑟2 1𝑟2 = 4𝜋𝐺𝜀0𝐸2 𝑐4𝐴𝐵 (16) 第(2, 2), (3, 3)成分: 𝐴2𝐴𝐵 𝐴𝐵4𝐴𝐵2 +𝐴2𝐴𝐵𝑟 𝐴24𝐴2𝐵 𝐵2𝐵2𝑟 = 4𝜋𝐺𝜀0𝐸2 𝑐4𝐴𝐵 (17) である。文字がいろいろあってややこしいが、 𝜋 と 𝐺 と 𝜀 と 𝑐 は定数、 𝑟 は座標、 𝐴 と 𝐵 と 𝐸 は未知関数(𝑟 の関数)である。未知関数が3つで方程式も3つなので数はちょうどよい。あとは愚直にこれらを解くだけである。

𝐵 について解く

(16)式から(15)式を丸ごと引くと、 𝐴𝐴𝐵𝑟 +𝐵𝐵2𝑟 = 0 (16)式から(15)式を引いた。 𝐴𝐵+𝐴𝐵 𝐴𝐵2𝑟 = 0 𝐴𝐵+𝐴𝐵=0 (𝐴𝐵)=0 𝐴𝐵=𝑏(𝑏は積分定数) (18) のようになる。1.1節の最後に書いたように 𝐴 = 0 や 𝐵 = 0 は解ではない。だから 𝑏 = 0 でもない。したがって、 𝐵=𝑏𝐴(19) であり、後で使うためにこれの逆数とその微分を計算すると、 1𝐵=𝐴𝑏 (20) 𝐵𝐵2 = 𝐴𝑏 (21) である。

𝐵 を消去する

3つあった式から 𝐵 を消去すれば、 𝐵 を含まない式が2つ出てくるはずだ。

1つ目は、(16)式(18)(20)式を代入すると、 𝐴𝐴𝐵𝑟 +1𝐵𝑟2 1𝑟2 = 4𝜋𝐺𝜀0𝐸2 𝑐4𝐴𝐵 (16)式 𝐴𝑏𝑟 +𝐴𝑏𝑟2 1𝑟2 = 4𝜋𝐺𝜀0𝐸2𝑐4𝑏 (18)(20)式を代入した。 𝐴𝑟+𝐴𝑏𝑟2 1𝑟2 = 4𝜋𝐺𝜀0𝐸2𝑐4𝑏 (𝐴𝑟)𝑏𝑟2 1𝑟2 = 4𝜋𝐺𝜀0𝐸2𝑐4𝑏 (22) となる。あるいは、当たり前だが(15)式(18)(20)(21)式を代入してもこれと同じ式が出てくる。積の微分公式を使って左辺の最初の2項をまとめられることは、シュバルツシルト解を導出したときと同じである。

2つ目は、(17)式(18)(21)式を代入すると、 𝐴2𝐴𝐵 𝐴𝐵4𝐴𝐵2 +𝐴2𝐴𝐵𝑟 𝐴24𝐴2𝐵 𝐵2𝐵2𝑟 = 4𝜋𝐺𝜀0𝐸2 𝑐4𝐴𝐵 (17)式 𝐴2𝐴𝐵 +𝐴2𝐴𝐵𝑟 𝐴24𝐴2𝐵 𝐴𝐵4𝐴𝐵2 𝐵2𝐵2𝑟 = 4𝜋𝐺𝜀0𝐸2 𝑐4𝐴𝐵 ←項の順番を変えただけ。 1𝐴𝐵 ( 𝐴2 +𝐴2𝑟 𝐴24𝐴 ) 𝐵𝐵2 ( 𝐴4𝐴+12𝑟 ) = 4𝜋𝐺𝜀0𝐸2 𝑐4𝐴𝐵 1𝑏 ( 𝐴2 +𝐴2𝑟 𝐴24𝐴 ) + 𝐴𝑏 ( 𝐴4𝐴+12𝑟 ) = 4𝜋𝐺𝜀0𝐸2𝑐4𝑏 (18)(21)式を代入した。 1𝑏 ( 𝐴2 +𝐴2𝑟 𝐴24𝐴 +𝐴24𝐴 +𝐴2𝑟 ) = 4𝜋𝐺𝜀0𝐸2𝑐4𝑏 1𝑏 ( 𝐴2 +2𝐴2𝑟 ) = 4𝜋𝐺𝜀0𝐸2𝑐4𝑏 1𝑏 𝐴𝑟+2𝐴2𝑟 = 4𝜋𝐺𝜀0𝐸2𝑐4𝑏 1𝑏 𝐴𝑟2+2𝐴𝑟 2𝑟2 = 4𝜋𝐺𝜀0𝐸2𝑐4𝑏 (𝐴𝑟2) 2𝑏𝑟2 = 4𝜋𝐺𝜀0𝐸2𝑐4𝑏 (23) となる。左辺はもともと5個あった項が 𝐵 を消去しただけで1個の項にまとまってしまった。

𝐴 を求める

(23)式(22)式を丸ごと足すと、 (𝐴𝑟2) 2𝑏𝑟2 +(𝐴𝑟)𝑏𝑟2 1𝑟2 = 0 (23)式(22)式を足した。 (𝐴𝑟2)𝑏 +2(𝐴𝑟)𝑏 2 = 0 𝐴𝑟2𝑏 +2𝐴𝑟𝑏 2𝑟 = 𝑟𝑠 𝑟𝑠は積分定数) 𝐴𝑟2+2𝐴𝑟𝑏 = 2𝑟𝑟𝑠 (𝐴𝑟2)𝑏 = 2𝑟𝑟𝑠 𝐴𝑟2𝑏 = 𝑟2𝑟𝑠𝑟+𝑘 (𝑘は積分定数) 𝐴 = 𝑏 (1𝑟𝑠𝑟+𝑘𝑟2) (24) となって 𝐴 が決まる。3行目で積分定数の前の符号をマイナスにしたのは、そうすると後の説明が楽になることを私が知っているからである。初めてこの問題を解くときはもちろんそんなことは知らないから、後になってから「あのときマイナスをつけておけば便利だったな。」と気づくのだ。

𝐵 を求める

(24)式(19)式に代入すると 𝐵= 11𝑟𝑠𝑟+𝑘𝑟2 (25) である。

これで計量が決まった。(24)(25)式(2)式に代入すると計量テンソルは (𝑔𝜇𝜈)= ( 𝑏 (1𝑟𝑠𝑟+𝑘𝑟2) 0 0 0 0 11𝑟𝑠𝑟+𝑘𝑟2 0 0 00𝑟20 000𝑟2sin2𝜃 ) となる。

𝐸 を求める

(24)式(22)式に代入すると (𝐴𝑟)𝑏𝑟2 1𝑟2 = 4𝜋𝐺𝜀0𝐸2𝑐4𝑏 (22)式 4𝜋𝐺𝜀0𝐸2𝑐4𝑏 = (𝐴𝑟)𝑏𝑟2 +1𝑟2 = { 𝑏 (1𝑟𝑠𝑟+𝑘𝑟2) 𝑟 } 𝑏𝑟2 +1𝑟2 (24)式を代入した。 = (𝑟𝑟𝑠+𝑘𝑟) 𝑟2 +1𝑟2 = (1𝑘𝑟2)𝑟2 +1𝑟2 = (1𝑟2𝑘𝑟4) +1𝑟2 =𝑘𝑟4 𝐸2 = 𝑐4𝑏𝑘 4𝜋𝐺𝜀0𝑟4 𝐸 = ±𝑏𝑘𝜋𝐺𝜀0 𝑐22𝑟2 (26) である。あるいは、当たり前だが(23)式(24)式を代入してもこれと同じ式が出てくる。右辺の見た目はごちゃごちゃしているが 𝑟 以外はすべて定数なので単純な関数である。

これで電磁場も決まった。(26)式(3)式に代入すれば電磁場テンソルは (𝐹𝜇𝜈)= ( 0 𝑏𝑘𝜋𝐺𝜀0 𝑐2𝑟2 0 0 ±𝑏𝑘𝜋𝐺𝜀0 𝑐2𝑟2 0 0 0 0000 0000 ) (27) であり、(10)式(18)(26)式を代入すれば (𝐹𝜇𝜈)= ( 0 ±𝑘𝜋𝐺𝜀0𝑏 𝑐2𝑟2 0 0 𝑘𝜋𝐺𝜀0𝑏 𝑐2𝑟2 0 0 0 0000 0000 ) (28) である。

マクスウェル方程式を満たしているか

重力場と電磁場が決まったと言ったが、今は重力場の方程式(アインシュタイン方程式)を解いただけで電磁場の方程式(マクスウェル方程式)のことを考えていなかった。しかし(27)(28)式がマクスウェル方程式を満たしているかどうかきちんと確認すべきであろう。

その確認の計算をここに書くのはめんどくさいので省略し、読者への演習問題としておく。結果はきちんと満たされているはずだ。マクスウェル方程式については再度1.4節で取り上げるので、気になる人はそこを見て欲しい。

積分定数 𝑏

積分定数 𝑏 はシュバルツシルト解(外部解)のときと同様の理屈により正であれば何でもよい。これは人間が勝手に張る座標系の張り方で決まるから、 𝑤 軸の目盛り間隔を適切な値にすることにより 𝑏 = 1 としてよい。よってそれを(24)(26)式に代入すれば 𝐴 = 1𝑟𝑠𝑟+𝑘𝑟2 (29) 𝐸 = ±𝑘𝜋𝐺𝜀0 𝑐22𝑟2 (30) となる。

積分定数 𝑟𝑠

積分定数 𝑟𝑠 もシュバルツシルト解(外部解)のときと同様で、シュバルツシルト半径である。物体の質量を 𝑀 とすれば 𝑟𝑠=2𝐺𝑀𝑐2 (31) である。

積分定数 𝑘

積分定数 𝑘 は電磁場の大きさを特徴づける定数である。 𝑘 が0のときシュバルツシルト解(外部解)と一致する。また、 𝐸 が実数だから 𝑘 ≧ 0 でなければならない。

物体の電荷を 𝑄 とおき、それと 𝑘 との関係を調べよう。 𝐸 を電場だと考えて、 𝑟 が一定( 𝑤 も一定)の2次元球面上で積分形のガウスの法則を適用すれば、 4𝜋𝑟2𝐸 = 𝑄𝜀0 4𝜋𝑟2 ( ±𝑘𝜋𝐺𝜀0 𝑐22𝑟2 ) = 𝑄𝜀0 (30)式を代入した。 ± 2𝑐2𝜋𝑘𝐺𝜀0 = 𝑄𝜀0 4𝜋𝑐4𝑘𝐺𝜀0 = 𝑄2𝜀02 𝑘 = 𝐺𝑄24𝜋𝜀0𝑐4 (32) のようになる。しかし 𝐸 が電場の真の値だと安易に考えてはいけない。なぜなら今は時空が曲がっていて座標軸も曲がっているので 𝑤 や 𝑟 の基底の大きさが1ではないから、もしかしたら 𝐸 は 𝑟 方向の物理的な電場の大きさとは違う変な値になっているかもしれないからだ。そうではあるが幸いにも今の解は 𝑟 → ∞ の極限で 𝑔₀₀ → −1 ,  𝑔₁₁ → 1 になっていて無限遠ではミンコフスキー時空になっているようなので、無限遠でガウスの法則を適用すれば上のような計算が成り立つだろうということだ。

一般解

(25)(29)・(30)(31)(32)式をまとめると、解は (𝑔𝜇𝜈)= ( ( 1 2𝐺𝑀𝑐2𝑟+ 𝐺𝑄2 4𝜋𝜀0𝑐4𝑟2 ) 0 0 0 0 1 1 2𝐺𝑀𝑐2𝑟+ 𝐺𝑄2 4𝜋𝜀0𝑐4𝑟2 0 0 00𝑟20 000𝑟2sin2𝜃 ) (𝐹𝜇𝜈)= ( 0 𝑄4𝜋𝜀0𝑐𝑟2 0 0 𝑄4𝜋𝜀0𝑐𝑟2 0 0 0 0000 0000 ) のようになる。 𝐹𝜇𝜈 はもう面倒だから書かなかったが、 −𝐹𝜇𝜈 に等しくなる。

以上でライスナー・ノルドシュトルム解の導出は終わりである。

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