添え字の数字が3種類の場合
𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈 の添え字に入る数字が3種類、つまり1組だけ同じ数字がある場合を考える。そのような成分は96個あり、以下の4通りに分けられる。
- ① 𝜅 = 𝜇 であるもの。例: 𝑅¹₂₁₃
- ② 𝜅 = 𝜈 であるもの。例: 𝑅¹₂₃₁
- ③ 𝜆 = 𝜇 であるもの。例: 𝑅²₁₁₃
- ④ 𝜆 = 𝜈 であるもの。例: 𝑅²₁₃₁
このうち、②は 𝜇 と 𝜈 を入れ替えれば①になり、④は 𝜇 と 𝜈 を入れ替えれば③になる。したがって①と③を公式から算出すれば十分である。
では(11)式に代入してみよう。先に①(𝜅 = 𝜇 であるもの)を計算する。①の中で、まず1組の同じ数字が「0」であるものから片づけることにする。その中の1つは、
のように計算される。最初なので3番目の等号について詳しく説明しよう。
1行目の右辺の第1項および第2項はクリストッフェル記号の1階偏微分である。これらは(30)〜(39)式の中に同じものがあるかどうかを探し、あればその値を採用し、なければ0とする。今は2つともないので0である。あるいは、今考えているシュバルツシルト解の計量テンソルは対角行列であるから、被微分関数であるクリストッフェル記号の3つの添え字がすべて異なっていればその項は0であることがすぐにわかる。
第3項
は 𝜎 についての縮約であり 0〜3 を代入して和を取ったものであるから実体は4個の項である。クリストッフェル記号の各成分の値は第1章で求めたのでそれを参照すればよい。ここで
の部分に着目すると、これが0でないのは 𝜎 = 2 のとき(𝛤²₁₂)だけである。また、
の部分に着目すると、これが0でないのは 𝜎 = 1 のとき(𝛤⁰₁₀)だけである。したがって
は 𝜎 が何であろうと0であるから第3項全体は0である。
第4項
は第3項と同様に実体は4個の項である。ところが
の部分に着目すると、 𝜎 の値が 0〜3 のどれであろうと
である。したがって
は 𝜎 が何であろうと0であるから第4項全体は0である。
このような考察の結果、2行目は0ばかりになったのである。
残りの成分は同様に、
のようになる。結果だけでなく途中の計算式の項もすべて0になってしまった。ところで今さらだが、この場合は実はもっと簡単に計算できるのである。今は計量テンソルが対角行列であるから、そのことと(15)式を利用すると、例えば、
のようになるので、(45)式と(46)式、(47)式と(48)式、(49)式と(50)式はそれぞれ値が等しいのである。だから計算効率を求めるなら公式を使って計算しなければならない成分は6通りでなく半分の3通りだけである。だが途中の計算式に出てくる項が両者で大きく異なるので、ここではあえて(11)式の公式を使ったらどうなるかを実演しているのだ。この先も同様である。
続いて1組の同じ数字が「1」や「2」であるものも計算すると、
のようになる。やはりすべて0である。0しか出てこないのだろうか。最後に1組の同じ数字が「3」であるものも計算すると、
のようになる。最後の2個になってようやく計算過程で0でない項が現れた。しかし他の項と打ち消しあって最終的には結局0である。
ここまで、①(𝜅 = 𝜇 であるもの)を計算したらすべて0になった。(11)式の公式を使って24通りの計算したが、先ほど書いたように本当にその計算が必要だったのは半分の12通りである。
次は③ (𝜆 = 𝜇 であるもの)であるが、①の24成分がすべて0であることがわかった現段階では、③もすべて0であることが簡単にわかる。今は計量テンソルが対角行列であるから、そのことと(13)式を利用すると、例えば、
のようになる。ところが(45)式によると 𝑅⁰₁₀₂ は0であったから 𝑅¹₀₀₂ も0になる。このように、①がすべて0なら③もすべて0である。
したがって③に関してはもう(11)式の公式を使って算出する必要はない。ただし③を(11)式に代入したときと①を(11)式に代入したときでは現れる項が大きく異なるし、①より先に③を計算した人がその過程を確認したいかもしれないので、ここではあえて(11)式を使って③を算出する過程も載せておく。この先の24通りの式は、計算結果が欲しいだけなら蛇足である。
以上のように確かにすべて0になる。22番目までは結果だけでなく途中の計算式の項もすべて0になる。最後の2個になってようやく計算過程で0でない項が現れた。しかし他の項と打ち消しあって最終的には結局0である。
添え字の数字が2種類の場合
最後に、 𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈 の添え字に入る数字が2種類、つまり同じ数字の組が2組ある場合を考える。そのような成分は24個あり、以下の2通りに分けられる。
- ⑤ 𝜅 = 𝜇 ≠ 𝜆 = 𝜈 であるもの。例: 𝑅¹₂₁₂
- ⑥ 𝜅 = 𝜈 ≠ 𝜆 = 𝜇 であるもの。例: 𝑅¹₂₂₁
このうち、⑥は 𝜇 と 𝜈 を入れ替えれば⑤になる。したがって⑤を公式から算出すれば十分である。
では(11)式に代入してみよう。
12通りの計算式で24成分が求まった。いずれも0でない値になった。
ここでも①や③のときと同様に、もっと楽な方法がある。今は計量テンソルが対角行列であるから、そのことと(12)・(13)式を利用すると、例えば、
のようになるから、 𝑅⁰₁₀₁ を求めた後で 𝑅¹₀₁₀ を求めるときは(11)式の公式を使うよりも(51)式を使う方が簡単である。これを利用すれば、(11)式を使った計算は12通りでなく半分の6通りで済む。