2.4 ついでに4階反変テンソル 𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈 まで
2.2節と2.3節でシュバルツシルト解の4階共変テンソル 𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈 と1階反変3階共変テンソル 𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈 を算出した。ところで1階反変3階共変テンソルは 𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈 だけでなく 𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈 や 𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈 や 𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈 といったものもある。また、他にも2階反変2階共変テンソルとか3階反変1階共変テンソルとか4階反変テンソルも当然ある。
それらを求めて何か得があるかどうかは知らないが、とりあえずついでに求めたものを載せておく。やり方は、計量テンソルを使って添え字を上げていくだけである。つまり、
のような要領で計算できる。シュバルツシルト解の場合は計量テンソルが対角行列であるからこのように簡単にできるのであって、一般の場合は地道に縮約の計算をやらなければならない。
2.4.1 4階共変テンソル
4階共変テンソル 𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈 は表2のとおりである。0でない成分をもう一度ここに書いておく。
2.4.2 1階反変3階共変テンソル
1階反変3階共変テンソルのうち、 𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈 は表1のとおりである。他に 𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈 や 𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈 や 𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈 を含めて、0でない成分は次のようになる。
どれも似たようなパターンである。
2.4.3 2階反変2階共変テンソル
2階反変2階共変テンソルは全部を一気に書くとややこしいので2回に分ける。まず 𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈 と 𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈 の0でない成分は次のようになる。
この場合はかなり単純な形になった。続いて 𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈 と 𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈 と 𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈 と 𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈 の0でない成分は次のようになる。
今度はそれほど単純ではない。ただ添え字が上にあっても下にあっても、0でない成分がそれぞれ24個であることは変わらない。
2.4.4 3階反変1階共変テンソル
3階反変1階共変テンソルは、 𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈 と 𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈 と 𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈 と 𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈 の0でない成分は次のようになる。
どれも似たようなパターンである。
2.4.5 4階反変テンソル
4階反変テンソル 𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈 の0でない成分は次のようになる。
以上で添え字の上下にかかわらずシュバルツシルト解(外部解)のリーマンテンソルのすべての成分が求まった。
2.5 リーマンテンソルの2乗 𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈
𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈 という量を考えてみる。これはリーマンテンソルの2乗であり、スカラーであるから値は座標系によらない。
これを求める方法はいろいろあるが、まずは馬鹿正直にこのまま代入すると、2.4.1節と2.4.5節の結果を使えばよいから、
のようになる。楽をしたいなら、 𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈 = 𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈 であるから2.4.3節の結果を使って
のように計算することもできる。各成分が単純であるのと、2.4.5節まで計算する必要がなく2.4.3節の前半までの結果から計算できるので、多少は楽である。
この値
自体の幾何学的な意味は知らないが、シュバルツシルト解(外部解)のリーマン曲率の大きさのようなものである。もっとも、2乗されているので「大きさ」というなら平方根をとった
の方がよいのかもしれないが。
時空の各点における曲率の大きさを1個の数値で表したいならスカラー曲率(リッチスカラー)があるではないか、と言われればそのとおりである。ただしスカラー曲率やリッチテンソルは物質も電磁場もない真空では0になってしまう。だからシュバルツシルト解(外部解)ではいたる所でスカラー曲率は0である。しかしそれでも時空は曲がっているので、そのような曲がりの大きさを知りたいならリーマンテンソルの2乗を見ればよさそうである。
リーマンテンソルの2乗 𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈𝑅𝜅𝜆𝜇𝜈 とスカラー曲率(リッチスカラー) 𝑅 は次のように表すこともできる(ここで 𝑅 に2個の添え字がついたものはリッチテンソルである)。
リーマンテンソルが0でないがリッチテンソルやスカラー曲率(リッチスカラー)が0である状況というのは、4次元以上でないと生じないらしい。だから2次元や3次元から連想することもできないので、我々凡人には具体的な状況を思い浮かべることは難しい。