「双子のパラドックス」を両者の視点から計算する。(2)

A.3. 折り返し局面

次に往路の減速を始めてから往路が終了するまで、およびその後直ちに復路に突入してから復路の加速をやめるまでの期間(これを「折り返し局面」とする。)を考える。往路から復路に切り替わる前後で加速度は一定だからまとめて扱うのである。

この局面の開始時は往路惰行局面の終了時と同じであるから、ボブの固有時は定義により 𝑇₁+𝑇₂ であり、A.2節の最後で計算したようにそのときの座標時は 𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 +𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 、ボブの速度は 𝑐tanh𝑎𝑇₁𝑐 、ボブの位置は 𝑐𝑇₂sinh𝑎𝑇₁𝑐 +𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 である。これが初期条件となる。

次にボブが満たすべき微分方程式の一般解を求める。加速度が一定の 𝑎 である場合の解はA.1節の出発局面の表2で導出済みである。そしてその解は 𝑎 が正でも負でも成り立つのであった。今の折り返し局面では加速度が一定の −𝑎 (𝑎 > 0) であるから、以下のように表2の 𝑎 を −𝑎 に置き換えるだけでよい。

ボブの固有時は(10)式の 𝑎 を −𝑎 に置き換えて 𝜏𝐵 = 𝑐𝑎arsinh𝑎𝑡+𝐾₀𝑐 +𝐾₁ = 𝑐𝑎arsinh (𝑎𝑡𝐾₀𝑐) +𝐾₁ = 𝑐𝑎arsinh𝑎𝑡𝐾₀𝑐+𝐾₁ (22) となり、ボブの速度は(8)式の 𝑎 を −𝑎 に置き換えて 𝑣(𝑡) = 𝑎𝑡+𝐾₀ 1+(𝑎𝑡+𝐾₀𝑐)2 = 𝑎𝑡𝐾₀ 1+(𝑎𝑡𝐾₀𝑐)2 = 𝑎𝑡𝐾₀ 1+(𝑎𝑡𝐾₀𝑐)2 (23) となり、ボブの位置は(14)式の 𝑎 を −𝑎 に置き換えて 𝑥(𝑡) = 𝑐2𝑎 1+(𝑎𝑡+𝐾₀𝑐)2 +𝐾₂ = 𝑐2𝑎 1+(𝑎𝑡𝐾₀𝑐)2 +𝐾₂ = 𝑐2𝑎 1+(𝑎𝑡𝐾₀𝑐)2 +𝐾₂ (24) となる。また、 𝜏𝐵 によるパラメータ表示をすると、座標時は(13)式の 𝑎 を −𝑎 に置き換えて 𝑡 = 𝑐𝑎 sinh𝑎(𝜏𝐵𝐾₁)𝑐 𝐾₀𝑎 = 𝑐𝑎 { sinh𝑎(𝜏𝐵𝐾₁)𝑐 } +𝐾₀𝑎 = 𝑐𝑎sinh𝑎(𝜏𝐵𝐾₁)𝑐 +𝐾₀𝑎 (25) となり、ボブの速度は(15)式の 𝑎 を −𝑎 に置き換えて 𝑣(𝑡) = 𝑐tanh𝑎(𝜏𝐵𝐾₁)𝑐 = 𝑐tanh𝑎(𝜏𝐵𝐾₁)𝑐 (26) となり、ボブの位置は(16)式の 𝑎 を −𝑎 に置き換えて 𝑥(𝑡) = 𝑐2𝑎 cosh𝑎(𝜏𝐵𝐾₁)𝑐 +𝐾₂ = 𝑐2𝑎 cosh𝑎(𝜏𝐵𝐾₁)𝑐 +𝐾₂ (27) となる。

次に初期条件を使って積分定数 𝐾₀, 𝐾₁, 𝐾₂ を定める。まず(26)式の 𝑣(𝑡) と 𝜏𝐵 に初期条件を代入すると、 𝑣(𝑡) = 𝑐tanh𝑎(𝜏𝐵𝐾₁)𝑐 (26)式 𝑐tanh𝑎𝑇₁𝑐 = 𝑐tanh𝑎{(𝑇₁+𝑇₂)𝐾₁}𝑐 ←初期条件を代入した。 tanh𝑎𝑇₁𝑐 = tanh𝑎(𝑇₁+𝑇₂𝐾₁)𝑐 𝑎𝑇₁𝑐 = 𝑎(𝑇₁+𝑇₂𝐾₁)𝑐 𝑇₁ = (𝑇₁+𝑇₂𝐾₁) 𝑇₁ = 𝑇₁𝑇₂+𝐾₁ 2𝑇₁+𝑇₂ = 𝐾₁ (28) のように 𝐾₁ が定まる。(25)式の 𝑡 と 𝜏𝐵 に初期条件を代入し 𝐾₁ に(28)式を代入すると、 𝑡 = 𝑐𝑎sinh𝑎(𝜏𝐵𝐾₁)𝑐 +𝐾₀𝑎 (25)式 𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 +𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 = 𝑐𝑎 sinh 𝑎{(𝑇₁+𝑇₂)(2𝑇₁+𝑇₂)} 𝑐 +𝐾₀𝑎 ←初期条件と(28)式を代入した。 𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 +𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 = 𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐+𝐾₀𝑎 𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 +𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 = 𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐+𝐾₀𝑎 𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 +2𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 = 𝐾₀𝑎 𝑎𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 +2𝑐sinh𝑎𝑇₁𝑐 = 𝐾₀ (29) のように 𝐾₀ が定まる。(27)式の 𝑥(𝑡) と 𝜏𝐵 に初期条件を代入し 𝐾₁ に(28)式を代入すると、 𝑥(𝑡) = 𝑐2𝑎 cosh𝑎(𝜏𝐵𝐾₁)𝑐 +𝐾₂ (27)式 𝑐𝑇₂sinh𝑎𝑇₁𝑐 +𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 = 𝑐2𝑎 cosh 𝑎{(𝑇₁+𝑇₂)(2𝑇₁+𝑇₂)} 𝑐 +𝐾₂ ←初期条件と(28)式を代入した。 𝑐𝑇₂sinh𝑎𝑇₁𝑐 +𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 = 𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 +𝐾₂ 𝑐𝑇₂sinh𝑎𝑇₁𝑐 +𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 = 𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 +𝐾₂ 𝑐𝑇₂sinh𝑎𝑇₁𝑐 +2𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 = 𝐾₂ (30) のように 𝐾₂ が定まる。

以上で積分定数の値が決まったので、特殊解を求める。ボブの固有時は(22)式より 𝜏𝐵 = 𝑐𝑎arsinh𝑎𝑡𝐾₀𝑐+𝐾₁ (22)式 = 𝑐𝑎 arsinh 𝑎𝑡 ( 𝑎𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 +2𝑐sinh𝑎𝑇₁𝑐 ) 𝑐 +(2𝑇₁+𝑇₂) (29)(28)式を代入した。 = 𝑐𝑎 arsinh { 𝑎𝑐 (𝑡𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐) 2sinh𝑎𝑇₁𝑐 } +2𝑇₁+𝑇₂ (31) となり、ボブの速度は(23)式より 𝑣(𝑡) = 𝑎𝑡𝐾₀ 1+(𝑎𝑡𝐾₀𝑐)2 (23)式 = 𝑎𝑡 ( 𝑎𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 +2𝑐sinh𝑎𝑇₁𝑐 ) 1 + { 𝑎𝑡 ( 𝑎𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 +2𝑐sinh𝑎𝑇₁𝑐 ) 𝑐 } 2 (29)式を代入した。 = 𝑎(𝑡𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐) 2𝑐sinh𝑎𝑇₁𝑐 1 + { 𝑎𝑐(𝑡𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐) 2sinh𝑎𝑇₁𝑐 } 2 (32) となり、ボブの位置は(24)式より 𝑥(𝑡) = 𝑐2𝑎 1+(𝑎𝑡𝐾₀𝑐)2 +𝐾₂ (24)式 = 𝑐2𝑎 1 + { 𝑎𝑡 ( 𝑎𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 +2𝑐sinh𝑎𝑇₁𝑐 ) 𝑐 } 2 + ( 𝑐𝑇₂sinh𝑎𝑇₁𝑐 +2𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 ) (29)(30)式を代入した。 = 𝑐2𝑎 1 + { 𝑎𝑐 (𝑡𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐) 2sinh𝑎𝑇₁𝑐 } 2 +𝑐𝑇₂sinh𝑎𝑇₁𝑐 +2𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 (33) となる。また、 𝜏𝐵 によるパラメータ表示をすると、座標時は(25)式より 𝑡 = 𝑐𝑎sinh𝑎(𝜏𝐵𝐾₁)𝑐 +𝐾₀𝑎 (25)式 = 𝑐𝑎 sinh 𝑎{𝜏𝐵(2𝑇₁+𝑇₂)}𝑐 + 𝑎𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 +2𝑐sinh𝑎𝑇₁𝑐 𝑎 (28)(29)式を代入した。 = 𝑐𝑎 sinh𝑎(𝜏𝐵2𝑇₁𝑇₂)𝑐 +𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 +2𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 (34) となり、ボブの速度は(26)式より 𝑣(𝑡) = 𝑐tanh𝑎(𝜏𝐵𝐾₁)𝑐 (26)式 = 𝑐 tanh 𝑎{𝜏𝐵(2𝑇₁+𝑇₂)}𝑐 (28)式を代入した。 = 𝑐 tanh𝑎(𝜏𝐵2𝑇₁𝑇₂)𝑐 (35) となり、ボブの位置は(27)式より 𝑥(𝑡) = 𝑐2𝑎 cosh𝑎(𝜏𝐵𝐾₁)𝑐 +𝐾₂ (27)式 = 𝑐2𝑎 cosh 𝑎{𝜏𝐵(2𝑇₁+𝑇₂)}𝑐 + ( 𝑐𝑇₂sinh𝑎𝑇₁𝑐 +2𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 ) (28)(30)式を代入した。 = 𝑐2𝑎 cosh𝑎(𝜏𝐵2𝑇₁𝑇₂)𝑐 + 𝑐𝑇₂sinh𝑎𝑇₁𝑐 +2𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 (36) となる。

(31)(36)式をまとめたものが表5だ。だんだん式が長くなってきたが、大部分は定数であって変数は 𝑡 または 𝜏𝐵 だけなので、それほどややこしい関数ではない。単なる双曲線である。

表5. 折り返し局面 (𝑇₁+𝑇₂ ≦ 𝜏𝐵 ≦ 3𝑇₁+𝑇₂) における解
座標時 𝑡 による表示ボブの固有時 𝜏𝐵 によるパラメータ表示
座標時 𝑡 (34) 𝑐𝑎 sinh𝑎(𝜏𝐵2𝑇₁𝑇₂)𝑐 +𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 +2𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐
ボブの固有時 (31) 𝑐𝑎 arsinh { 𝑎𝑐 (𝑡𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐) 2sinh𝑎𝑇₁𝑐 } +2𝑇₁+𝑇₂ 𝜏𝐵
ボブの速度 (32) 𝑣(𝑡) = 𝑎(𝑡𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐) 2𝑐sinh𝑎𝑇₁𝑐 1 + { 𝑎𝑐(𝑡𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐) 2sinh𝑎𝑇₁𝑐 } 2 (35) 𝑐 tanh𝑎(𝜏𝐵2𝑇₁𝑇₂)𝑐
ボブの位置 (33) 𝑥(𝑡) = 𝑐2𝑎 1 + { 𝑎𝑐 (𝑡𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐) 2sinh𝑎𝑇₁𝑐 } 2 +𝑐𝑇₂sinh𝑎𝑇₁𝑐 +2𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 (36) 𝑐2𝑎 cosh𝑎(𝜏𝐵2𝑇₁𝑇₂)𝑐 +𝑐𝑇₂sinh𝑎𝑇₁𝑐 +2𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎

ボブの固有時が 𝜏𝐵 = 2𝑇₁+𝑇₂ であるときに往路から復路に切り替わることが期待されるが、本当にそうなっているか確認しよう。(35)式に 𝜏𝐵 = 2𝑇₁+𝑇₂ を代入すると 速度=0 となり、この瞬間に速度が正から負に変わることがわかるので、確かにそうなっている。このとき、(34)式より座標時は 𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 +2𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 であり、(36)式よりボブの位置は 𝑐𝑇₂sinh𝑎𝑇₁𝑐 +2𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 2𝑐2𝑎 である。この位置はボブがアリスから最も遠くに離れたときの位置である。

折り返し局面の終了時では、 𝜏𝐵 = 3𝑇₁+𝑇₂ であるからこれを表5の解に代入すると、座標時は 𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 +3𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 、ボブの速度は 𝑐tanh𝑎𝑇₁𝑐 、ボブの位置は 𝑐𝑇₂sinh𝑎𝑇₁𝑐 +𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 である。

アリスに固定した座標系での折り返し局面におけるボブの世界線のグラフ (33)式 表5

A.4. 復路惰行局面

次に復路の加速をやめてから減速を始めるまでの、加速度が0である期間(これを「復路惰行局面」とする。)を考える。

この局面の開始時は折り返し局面の終了時と同じであるから、ボブの固有時は定義により 3𝑇₁+𝑇₂ であり、A.3節の最後で計算したようにそのときの座標時は 𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 +3𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 、ボブの速度は 𝑐tanh𝑎𝑇₁𝑐 、ボブの位置は 𝑐𝑇₂sinh𝑎𝑇₁𝑐 +𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 である。これが初期条件となる。

復路惰行局面を通して加速度が0であるから、速度 𝑣(𝑡)=𝑐tanh𝑎𝑇₁𝑐 は一定である。これは往路惰行局面での速度と同じ大きさで符号が逆である。固有時を求める式は(3)式のように、速度 𝑣(𝑡) についてはその2乗 {𝑣(𝑡)}² しか出てこないので、速度の大きさが同じであれば符号が逆でも固有時の式は同じである。したがって固有時 𝜏𝐵 は往路惰行局面の(17)式と同じ計算により 𝜏𝐵=𝑡cosh𝑎𝑇₁𝑐+𝐾₃ (𝐾₃は積分定数) (37) となる。初期条件は 𝑡 = 𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 +3𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 のとき 𝜏𝐵 = 3𝑇₁+𝑇₂ であるからこれを(37)式に代入すると 3𝑇₁+𝑇₂ = 𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 +3𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 cosh𝑎𝑇₁𝑐 +𝐾₃ 3𝑇₁+𝑇₂ = 𝑇₂+3𝑐𝑎tanh𝑎𝑇₁𝑐+𝐾₃ 3𝑇₁3𝑐𝑎tanh𝑎𝑇₁𝑐 = 𝐾₃ のように積分定数 𝐾₃ が定まる。これを(37)式に代入すると固有時は 𝜏𝐵 = 𝑡cosh𝑎𝑇₁𝑐 +3𝑇₁ 3𝑐𝑎tanh𝑎𝑇₁𝑐 (38) となる。(38)式を 𝑡 について解くと 𝑡cosh𝑎𝑇₁𝑐 +3𝑇₁ 3𝑐𝑎tanh𝑎𝑇₁𝑐 = 𝜏𝐵 𝑡cosh𝑎𝑇₁𝑐 = 𝜏𝐵 3𝑇₁ +3𝑐𝑎tanh𝑎𝑇₁𝑐 𝑡 = (𝜏𝐵3𝑇₁) cosh𝑎𝑇₁𝑐 +3𝑐𝑎tanh𝑎𝑇₁𝑐 cosh𝑎𝑇₁𝑐 = (𝜏𝐵3𝑇₁) cosh𝑎𝑇₁𝑐 +3𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 (39) である。速度 𝑣(𝑡) が 𝑡 によらず一定であるから、位置 𝑥(𝑡) は座標時 𝑡 の1次関数になるので速度と初期条件の座標を使って 𝑥(𝑡) = (𝑡𝑡 の初期値) 𝑣(𝑡) +𝑥(𝑡) の初期値 = { 𝑡 ( 𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 +3𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 ) } (𝑐tanh𝑎𝑇₁𝑐) + ( 𝑐𝑇₂sinh𝑎𝑇₁𝑐 +𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 ) = 𝑐 ( 𝑡 𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 3𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 ) tanh𝑎𝑇₁𝑐 + ( 𝑐𝑇₂sinh𝑎𝑇₁𝑐 +𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 ) = 𝑐 ( 𝑡 3𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 ) tanh𝑎𝑇₁𝑐 + 𝑐𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 tanh𝑎𝑇₁𝑐 + ( 𝑐𝑇₂sinh𝑎𝑇₁𝑐 +𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 ) = 𝑐 ( 𝑡 3𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 ) tanh𝑎𝑇₁𝑐 +𝑐𝑇₂sinh𝑎𝑇₁𝑐 + ( 𝑐𝑇₂sinh𝑎𝑇₁𝑐 +𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 ) = 𝑐 ( 𝑡 3𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 ) tanh𝑎𝑇₁𝑐 +2𝑐𝑇₂sinh𝑎𝑇₁𝑐 +𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 (40) と表される。 ついでに、(39)式(40)式に代入して 𝑥(𝑡) を 𝜏𝐵 で表してみる。

𝑥(𝑡) = 𝑐 { (𝜏𝐵3𝑇₁) cosh𝑎𝑇₁𝑐 +3𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 3𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 } tanh𝑎𝑇₁𝑐 +2𝑐𝑇₂sinh𝑎𝑇₁𝑐 +𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 = 𝑐 { (𝜏𝐵3𝑇₁) cosh𝑎𝑇₁𝑐 } tanh𝑎𝑇₁𝑐 +2𝑐𝑇₂sinh𝑎𝑇₁𝑐 +𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 = 𝑐 (𝜏𝐵3𝑇₁) sinh𝑎𝑇₁𝑐 +2𝑐𝑇₂sinh𝑎𝑇₁𝑐 +𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 = 𝑐 (𝜏𝐵3𝑇₁2𝑇₂) sinh𝑎𝑇₁𝑐 +𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 (41)

(38)(41)式をまとめたものが表6だ。

表6. 復路惰行局面 (3𝑇₁+𝑇₂ ≦ 𝜏𝐵 ≦ 3𝑇₁+2𝑇₂) における解
座標時 𝑡 による表示ボブの固有時 𝜏𝐵 によるパラメータ表示
座標時 𝑡 (39) (𝜏𝐵3𝑇₁) cosh𝑎𝑇₁𝑐 +3𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐
ボブの固有時 (38) 𝑡cosh𝑎𝑇₁𝑐 +3𝑇₁ 3𝑐𝑎tanh𝑎𝑇₁𝑐 𝜏𝐵
ボブの速度
(一定)
𝑣(𝑡) = 𝑐tanh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐tanh𝑎𝑇₁𝑐
ボブの位置 (40) 𝑥(𝑡) = 𝑐 (𝑡3𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐) tanh𝑎𝑇₁𝑐 +2𝑐𝑇₂sinh𝑎𝑇₁𝑐 +𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 (41) 𝑐 (𝜏𝐵3𝑇₁2𝑇₂) sinh𝑎𝑇₁𝑐 +𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎

復路惰行局面の終了時では、 𝜏𝐵 = 3𝑇₁+2𝑇₂ であるからこれを表6の解に代入すると、座標時は 2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 +3𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 、ボブの速度は 𝑐tanh𝑎𝑇₁𝑐 、ボブの位置は 𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 である。

アリスに固定した座標系での復路惰行局面におけるボブの世界線のグラフ (40)式 表6

A.5. 帰還局面

最後に復路の減速を始めてから復路が終了するまでの期間(これを「帰還局面」とする。)を考える。

この局面の開始時は復路惰行局面の終了時と同じであるから、ボブの固有時は定義により 3𝑇₁+2𝑇₂ であり、A.4節の最後で計算したようにそのときの座標時は 2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 +3𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 、ボブの速度は 𝑐tanh𝑎𝑇₁𝑐 、ボブの位置は 𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 である。これが初期条件となる。

今の帰還局面では加速度が一定の 𝑎 であり、これは出発局面と同じであるから、ボブが満たすべき微分方程式も出発局面とまったく同じである。したがって一般解はA.1節の出発局面の表2で導出した(13)(10)(8)(15)(14)(16)式をそのまま使えばよい。

次に初期条件を使って積分定数 𝐾₀, 𝐾₁, 𝐾₂ を定める。まず(15)式の 𝑣(𝑡) と 𝜏𝐵 に初期条件を代入すると、 𝑣(𝑡) = 𝑐tanh𝑎(𝜏𝐵𝐾₁)𝑐 (15)式 𝑐tanh𝑎𝑇₁𝑐 = 𝑐 tanh𝑎{(3𝑇₁+2𝑇₂)𝐾₁}𝑐 ←初期条件を代入した。 tanh𝑎𝑇₁𝑐 = tanh𝑎(3𝑇₁+2𝑇₂𝐾₁)𝑐 𝑎𝑇₁𝑐 = 𝑎(3𝑇₁+2𝑇₂𝐾₁)𝑐 𝑇₁ = 3𝑇₁+2𝑇₂𝐾₁ 𝐾₁ = 4𝑇₁+2𝑇₂ (42) のように 𝐾₁ が定まる。(13)式の 𝑡 と 𝜏𝐵 に初期条件を代入し 𝐾₁ に(42)式を代入すると、 𝑡 = 𝑐𝑎sinh𝑎(𝜏𝐵𝐾₁)𝑐 𝐾₀𝑎 (13)式 2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 +3𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 = 𝑐𝑎 sinh 𝑎 { (3𝑇₁+2𝑇₂) (4𝑇₁+2𝑇₂) } 𝑐 𝐾₀𝑎 ←初期条件と(42)式を代入した。 2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 +3𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 = 𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐𝐾₀𝑎 2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 +3𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 = 𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐𝐾₀𝑎 𝐾₀𝑎 = 2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 4𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 𝐾₀ = 2𝑎𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 4𝑐sinh𝑎𝑇₁𝑐 (43) のように 𝐾₀ が定まる。(16)式の 𝑥(𝑡) と 𝜏𝐵 に初期条件を代入し 𝐾₁ に(42)式を代入すると、 𝑥(𝑡) = 𝑐2𝑎 cosh𝑎(𝜏𝐵𝐾₁)𝑐 +𝐾₂ (16)式 𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 = 𝑐2𝑎 cosh 𝑎 { (3𝑇₁+2𝑇₂) (4𝑇₁+2𝑇₂) } 𝑐 +𝐾₂ ←初期条件と(42)式を代入した。 𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 = 𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐+𝐾₂ 𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 = 𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐+𝐾₂ 𝑐2𝑎 = 𝐾₂ (44) のように 𝐾₂ が定まる。

以上で積分定数の値が決まったので、特殊解を求める。ボブの固有時は(10)式より 𝜏𝐵 = 𝑐𝑎arsinh𝑎𝑡+𝐾₀𝑐+𝐾₁ (10)式 = 𝑐𝑎 arsinh 𝑎𝑡 + ( 2𝑎𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 4𝑐sinh𝑎𝑇₁𝑐 ) 𝑐 +4𝑇₁+2𝑇₂ (43)(42)式を代入した。 = 𝑐𝑎 arsinh { 𝑎𝑐(𝑡2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐) 4sinh𝑎𝑇₁𝑐 } +4𝑇₁+2𝑇₂ (45) となり、ボブの速度は(8)式より 𝑣(𝑡) = 𝑎𝑡+𝐾₀ 1+(𝑎𝑡+𝐾₀𝑐)2 (8)式 = 𝑎𝑡 + ( 2𝑎𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 4𝑐sinh𝑎𝑇₁𝑐 ) 1 + { 𝑎𝑡 + ( 2𝑎𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 4𝑐sinh𝑎𝑇₁𝑐 ) 𝑐 } 2 (43)式を代入した。 = 𝑎 ( 𝑡 2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 ) 4𝑐sinh𝑎𝑇₁𝑐 1 + { 𝑎 𝑐 ( 𝑡 2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 ) 4sinh𝑎𝑇₁𝑐 } 2 (46) となり、ボブの位置は(14)式より 𝑥(𝑡) = 𝑐2𝑎 1+(𝑎𝑡+𝐾₀𝑐)2 +𝐾₂ (14)式 = 𝑐2𝑎 1 + { 𝑎𝑡 + ( 2𝑎𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 4𝑐sinh𝑎𝑇₁𝑐 ) 𝑐 } 2 𝑐2𝑎 (43)(44)式を代入した。 = 𝑐2𝑎 1 + { 𝑎𝑐 (𝑡2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐) 4sinh𝑎𝑇₁𝑐 } 2 𝑐2𝑎 (47) となる。また、 𝜏𝐵 によるパラメータ表示をすると、座標時は(13)式より 𝑡 = 𝑐𝑎sinh𝑎(𝜏𝐵𝐾₁)𝑐 𝐾₀𝑎 (13)式 = 𝑐𝑎 sinh 𝑎{𝜏𝐵(4𝑇₁+2𝑇₂)}𝑐 2𝑎𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 4𝑐sinh𝑎𝑇₁𝑐 𝑎 (42)(43)式を代入した。 = 𝑐𝑎 sinh 𝑎(𝜏𝐵4𝑇₁2𝑇₂)𝑐 +2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 +4𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 (48) となり、ボブの速度は(15)式より 𝑣(𝑡) = 𝑐tanh𝑎(𝜏𝐵𝐾₁)𝑐 (15)式 = 𝑐 tanh 𝑎{𝜏𝐵(4𝑇₁+2𝑇₂)} 𝑐 (42)式を代入した。 = 𝑐 tanh 𝑎(𝜏𝐵4𝑇₁2𝑇₂)𝑐 (49) となり、ボブの位置は(16)式より 𝑥(𝑡) = 𝑐2𝑎 cosh𝑎(𝜏𝐵𝐾₁)𝑐 +𝐾₂ (16)式 = 𝑐2𝑎 cosh 𝑎{𝜏𝐵(4𝑇₁2𝑇₂)} 𝑐 𝑐2𝑎 (28)(30)式を代入した。 = 𝑐2𝑎 cosh 𝑎(𝜏𝐵4𝑇₁2𝑇₂)𝑐 𝑐2𝑎 (50) となる。

(45)(50)式をまとめたものが表7だ。

表7. 帰還局面 (3𝑇₁+2𝑇₂ ≦ 𝜏𝐵 ≦ 4𝑇₁+2𝑇₂) における解
座標時 𝑡 による表示ボブの固有時 𝜏𝐵 によるパラメータ表示
座標時 𝑡 (48) 𝑐𝑎 sinh 𝑎(𝜏𝐵4𝑇₁2𝑇₂)𝑐 +2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 +4𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐
ボブの固有時 (45) 𝑐𝑎 arsinh { 𝑎𝑐 (𝑡2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐) 4sinh𝑎𝑇₁𝑐 } +4𝑇₁+2𝑇₂ 𝜏𝐵
ボブの速度 (46) 𝑣(𝑡) = 𝑎(𝑡2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐) 4𝑐sinh𝑎𝑇₁𝑐 1 + { 𝑎𝑐(𝑡2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐) 4sinh𝑎𝑇₁𝑐 } 2 (49) 𝑐 tanh 𝑎(𝜏𝐵4𝑇₁2𝑇₂)𝑐
ボブの位置 (47) 𝑥(𝑡) = 𝑐2𝑎 1 + { 𝑎𝑐 (𝑡2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐) 4sinh𝑎𝑇₁𝑐 } 2 𝑐2𝑎 (50) 𝑐2𝑎 cosh 𝑎(𝜏𝐵4𝑇₁2𝑇₂)𝑐 𝑐2𝑎

ボブの固有時が 𝜏𝐵 = 4𝑇₁+2𝑇₂ であるときに全行程が終了し、このときボブは家に静止していることが期待されるが、本当にそうなっているか確認しよう。(49)式に 𝜏𝐵 = 4𝑇₁+2𝑇₂ を代入すると 速度=0 となり、(50)式に 𝜏𝐵 = 4𝑇₁+2𝑇₂ を代入すると 位置=0 となるので、確かにそうなっている。このとき、(48)式より座標時は 2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 +4𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 である。

アリスに固定した座標系での帰還局面におけるボブの世界線のグラフ (47)式 表7

以上の計算により、ボブが出発局面の最初から帰還局面の最後まで合計 4𝑇₁+2𝑇₂ の時間をかけて移動して戻ってくる間に、アリスにとっては 2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 +4𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 だけ時間が進むという主張が導かれた。ここまで延々と計算してようやく表1の左半分が算出できた。まだ半分、しかも楽なほうの半分である。

⛭ 数式の表示設定 (S)