「双子のパラドックス」を両者の視点から計算する。(6)

B.4. 復路惰行局面

復路路惰行局面は 3𝑇₁+𝑇₂𝑡(4)3𝑇₁+2𝑇₂ である。ここで採用するS(4)系は慣性系のミンコフスキー座標である。アリスには何の力も作用しないから、この座標系でアリスの運動はただの直線である。初期条件を当てはめればその直線は一意に決まる。初期条件として、この局面の開始時のアリスの固有時と位置と4元速度を使えばよい。

この局面の開始時は折り返し局面の終了時と同じである。その際、B.2節の最初のほうで述べたような理屈により、固有時と位置 𝑥(3) と4元速度の空間成分 𝑢(3)1 は折り返し局面のS(3)系での値と同じものをそのまま使えばよい。したがってB.3節の最後で計算したように固有時は 𝜏𝐴 = 𝑇₂sinh𝑎𝑇₁𝑐tanh𝑎𝑇₁𝑐 +𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐𝑎tanh𝑎𝑇₁𝑐 +4𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 (131) であり、位置は 𝑥(4) = 𝑐𝑇₂tanh𝑎𝑇₁𝑐 +𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 (132) であり、4元速度の第1成分(𝑥 成分)は 𝑢(4)1 = 𝑐sinh𝑎𝑇₁𝑐 (133) である。第2・3成分(𝑦, 𝑧 成分)はここでもずっと0なのでもう書かない。普通の3次元的な速度 𝑣 は、(102)式から(103)式を導出したときと同様でただ符号が異なるだけなので、 𝑣=𝑐tanh𝑎𝑇₁𝑐(134) である。この 𝑣 は局面を通して一定であるから、座標時 𝑡(4) とアリスの固有時 𝜏𝐴 との関係は(3)式の公式より d𝜏𝐴d𝑡(4) = 1(𝑣𝑐)2 = 1 (𝑐tanh𝑎𝑇₁𝑐𝑐)2 = 1tanh2𝑎𝑇₁𝑐 = 1cosh2𝑎𝑇₁𝑐 = 1cosh𝑎𝑇₁𝑐 (135) である。

アリスの速度 𝑣 が 𝑡(4) によらず一定であるから、アリスの位置 𝑥(4) は座標時 𝑡(4) の1次関数になるので(134)式の速度と(131)(132)式の初期条件の座標を使って 𝑥(4) = (𝑡(4)𝑡(4)の初期値) 𝑣+𝑥(4)の初期値 = {𝑡(4)(3𝑇₁+𝑇₂)} (𝑐tanh𝑎𝑇₁𝑐) + ( 𝑐𝑇₂tanh𝑎𝑇₁𝑐 +𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 ) = 𝑐 (𝑡(4)3𝑇₁𝑇₂) tanh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐𝑇₂tanh𝑎𝑇₁𝑐 +𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 = 𝑐 (𝑡(4)3𝑇₁2𝑇₂) tanh𝑎𝑇₁𝑐 +𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 (136) となる。また、アリスの固有時 𝜏𝐴 も座標時 𝑡(4) の1次関数になるので(131)式の初期条件と(135)式を使って 𝜏𝐴 = (𝑡(4)𝑡(4)の初期値) d𝜏𝐴d𝑡(4) +𝜏𝐴の初期値 = {𝑡(4)(3𝑇₁+𝑇₂)} 1cosh𝑎𝑇₁𝑐 + ( 𝑇₂sinh𝑎𝑇₁𝑐tanh𝑎𝑇₁𝑐 +𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐𝑎tanh𝑎𝑇₁𝑐 +4𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 ) = 𝑡(4)3𝑇₁𝑇₂ cosh𝑎𝑇₁𝑐 +𝑇₂sinh𝑎𝑇₁𝑐tanh𝑎𝑇₁𝑐 +𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐𝑎tanh𝑎𝑇₁𝑐 +4𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 = 𝑡(4)3𝑇₁𝑇₂ cosh𝑎𝑇₁𝑐 + 𝑇₂ sinh2𝑎𝑇₁𝑐 cosh𝑎𝑇₁𝑐 + 𝑇₂ cosh2𝑎𝑇₁𝑐 cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐𝑎tanh𝑎𝑇₁𝑐 +4𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 = 𝑡(4) 3𝑇₁ +𝑇₂ ( 1 +sinh2𝑎𝑇₁𝑐 +cosh2𝑎𝑇₁𝑐 ) cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐𝑎tanh𝑎𝑇₁𝑐 +4𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 = 𝑡(4) 3𝑇₁ +2𝑇₂sinh2𝑎𝑇₁𝑐 cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐𝑎tanh𝑎𝑇₁𝑐 +4𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 (137) である。

復路惰行局面の終了時では、 𝑡(4)=3𝑇₁+2𝑇₂ であるからこれを(137)(136)式に代入すると、アリスの固有時は 𝜏𝐴 = (3𝑇₁+2𝑇₂) 3𝑇₁ +2𝑇₂sinh2𝑎𝑇₁𝑐 cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐𝑎tanh𝑎𝑇₁𝑐 +4𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 = 2𝑇₂(1+sinh2𝑎𝑇₁𝑐) cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐𝑎tanh𝑎𝑇₁𝑐 +4𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 = 2𝑇₂cosh2𝑎𝑇₁𝑐 cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐𝑎tanh𝑎𝑇₁𝑐 +4𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 = 2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐𝑎tanh𝑎𝑇₁𝑐 +4𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 であり、位置は 𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 であり、4元速度は一定だからその第1成分(𝑥 成分)は(133)式と同じで 𝑐sinh𝑎𝑇₁𝑐 である。

ボブに固定した座標系での復路惰行局面におけるアリスの世界線のグラフ (136)式

B.5. 帰還局面

帰還局面は 3𝑇₁+2𝑇₂𝑡(5)4𝑇₁+2𝑇₂ である。ここで採用するS(5)系は、空間原点に静止するボブが𝑥軸負方向に大きさ𝑎の一定の重力加速度を感じる座標系である。これは物理的な状況はB.1節の出発局面のリンドラー座標S(1)系とまったく同じであり、座標の取り方もまったく同じである。したがってS(5)系の計量や測地線の方程式は、S(1)系と同じ式を使えばよい。なお、このことはS(1)系とS(5)系が同一の座標系だと言っているわけではない。異なる座標系であるが座標の値に依存する性質がまったく同じなだけである。

この局面の開始時は復路惰行局面の終了時と同じである。初期条件としてこの局面の開始時 𝑡(5)=3𝑇₁+2𝑇₂ におけるアリスの固有時と位置と4元速度を求める。これはB.4節の復路惰行局面の終了時 𝑡(4)=3𝑇₁+2𝑇₂ のS(4)系における値をS(5)系に座標変換したものである。その際、B.2節の最初のほうで述べたような理屈により、固有時と位置 𝑥(5) と4元速度の空間成分 𝑢(5)1 は復路惰行局面のS(4)系での値と同じものをそのまま使えばよい。したがってB.4節の最後で計算したように固有時は 𝜏𝐴 = 2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐𝑎tanh𝑎𝑇₁𝑐 +4𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 (138) であり、位置は 𝑥(5) = 𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 (139) であり、4元速度の第1成分(𝑥 成分)は 𝑢(5)1 = 𝑐sinh𝑎𝑇₁𝑐 (140) である。B.3節で述べたように、4元速度の第0成分(𝑐𝑡 成分)の初期条件は冗長であり新たな条件が追加されるわけではないのでそれはもう求めない。

次にアリスの運動方程式を求める。それはA.1節の出発局面のS(1)系における解と同じ式を使えばよい。さらに初期条件の第2・3成分(𝑦, 𝑧 成分)が0である点も同じであるから、それを適用した後の(80)〜(83)式(𝜏𝐴 によるパラメータ表示)または(85)(86)(88)(89)式𝑡(1) の関数としての表示)に対して次のような置き換えをすればよい。

{ 𝑡(1)𝑡(5) 𝑥(1)𝑥(5) 𝑢(1)0 𝑢(5)0 𝑢(1)1 𝑢(5)1 (141)

𝜏𝐴 によるパラメータ表示である(80)〜(83)式に対して(141)式の置き換えをすると、 𝑐𝑡(5) = 𝑐2𝑎 artanh 𝑐4(𝜏𝐴+𝐾₁₁)𝑎𝐾₁₀ +𝐾₁₂ (142) 𝑥(5) = 𝑐2𝑎 + 𝑐2(𝜏𝐴+𝐾₁₁)2 +𝑎2𝐾₁₀2𝑐6 (143) 𝑢(5)0= 𝐾₁₀ 𝑐2(𝜏𝐴+𝐾₁₁)2 +𝑎2𝐾₁₀2𝑐6 = 𝐾₁₀ (𝑥(5)+𝑐2𝑎)2 (144) 𝑢(5)1 = 𝑐2(𝜏𝐴+𝐾₁₁) 𝑐2(𝜏𝐴+𝐾₁₁)2 +𝑎2𝐾₁₀2𝑐6 = 𝑐2(𝜏𝐴+𝐾₁₁) 𝑥(5)+𝑐2𝑎 (145) である。(85)(86)(88)(89)式𝑡(1) の関数としての表示)に対して(141)式の置き換えをすると、 𝜏𝐴 = 𝑎𝐾₁₀𝑐4 tanh {𝑎𝑐(𝑡(5)𝐾₁₂𝑐)} 𝐾₁₁ (146) 𝑥(5) = 𝑐2𝑎 + 𝑎|𝐾₁₀| 𝑐3 cosh{𝑎𝑐(𝑡(5)𝐾₁₂𝑐)} (147) 𝑢(5)0 = 𝑐6 cosh2 {𝑎𝑐(𝑡(5)𝐾₁₂𝑐)} 𝑎2𝐾₁₀ (148) 𝑢(5)1 = 𝐾₁₀|𝐾₁₀| 𝑐 sinh {𝑎𝑐(𝑡(5)𝐾₁₂𝑐)} (149) である。積分定数を定めるためには前者の組と後者の組のどちらを使っても(あるいは両方を少しずつ使っても)構わないが、ここでは計算が楽そうな前者の(142)〜(145)式を使う。(145)式の左辺と右辺に初期条件(138)(140)式を代入すると、 𝑢(5)1 = 𝑐2(𝜏𝐴+𝐾₁₁) 𝑥(5)+𝑐2𝑎 (145)式 𝑐sinh𝑎𝑇₁𝑐 = 𝑐2 { ( 2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐𝑎tanh𝑎𝑇₁𝑐 +4𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 ) +𝐾₁₁ } ( 𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 ) +𝑐2𝑎 (138)(140)式を代入した。 𝑐sinh𝑎𝑇₁𝑐 = 𝑐2 ( 2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐𝑎tanh𝑎𝑇₁𝑐 +4𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 +𝐾₁₁ ) (𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐) 𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐sinh𝑎𝑇₁𝑐 = 𝑐2 ( 2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐𝑎tanh𝑎𝑇₁𝑐 +4𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 +𝐾₁₁ ) 𝑐sinh𝑎𝑇₁𝑐 𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 = ( 2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐𝑎tanh𝑎𝑇₁𝑐 +4𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 +𝐾₁₁ ) 𝑐𝑎tanh𝑎𝑇₁𝑐 = 2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 +𝑐𝑎tanh𝑎𝑇₁𝑐 4𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 𝐾₁₁ 𝐾₁₁ = 2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 4𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 (150) のように𝐾₁₁が定まる。(143)式の左辺と右辺に初期条件(138)(139)式および(150)式を代入すると、 𝑥(5) = 𝑐2𝑎 + 𝑐2(𝜏𝐴+𝐾₁₁)2 +𝑎2𝐾₁₀2𝑐6 (143)式 𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐2𝑎 = 𝑐2𝑎 + 𝑐2 { ( 2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐𝑎tanh𝑎𝑇₁𝑐 +4𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 ) + ( 2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 4𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 ) } 2 +𝑎2𝐾₁₀2𝑐6 (138)(139)(150)式 を代入した。 𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 = 𝑐2 (𝑐𝑎tanh𝑎𝑇₁𝑐) 2 +𝑎2𝐾₁₀2𝑐6 𝑐2𝑎cosh𝑎𝑇₁𝑐 = 𝑐4𝑎2 tanh2𝑎𝑇₁𝑐 +𝑎2𝐾₁₀2𝑐6 𝑐4 𝑎2cosh2𝑎𝑇₁𝑐 = 𝑐4𝑎2 tanh2𝑎𝑇₁𝑐 +𝑎2𝐾₁₀2𝑐6 𝑐4𝑎2 tanh2𝑎𝑇₁𝑐 + 𝑐4𝑎2cosh2𝑎𝑇₁𝑐 = 𝑎2𝐾₁₀2𝑐6 𝑐4𝑎2 ( sinh2𝑎𝑇₁𝑐 cosh2𝑎𝑇₁𝑐 + 1cosh2𝑎𝑇₁𝑐 ) = 𝑎2𝐾₁₀2𝑐6 𝑐4𝑎2 cosh2𝑎𝑇₁𝑐 cosh2𝑎𝑇₁𝑐 = 𝑎2𝐾₁₀2𝑐6 𝑐4𝑎2 = 𝑎2𝐾₁₀2𝑐6 𝑐10𝑎4 = 𝐾₁₀2 ±𝑐5𝑎2 = 𝐾₁₀ であるが、(144)式より 𝑢(5)0 と𝐾₁₀の符号が同じであり、 𝜏𝐴 が増えるとき 𝑡(5) も増えてほしいので 𝑢(5)0>0だから、複号は正を採用し、 𝐾₁₀=𝑐5𝑎2(151) のように𝐾₁₀が定まる。(142)式に初期条件(138)式𝑡(5)=3𝑇₁+2𝑇₂ および(150)(151)式を代入すると、 𝑐𝑡(5) = 𝑐2𝑎 artanh 𝑐4(𝜏𝐴+𝐾₁₁)𝑎𝐾₁₀ +𝐾₁₂ 𝑐(3𝑇₁+2𝑇₂) = 𝑐2𝑎 artanh 𝑐4 { ( 2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 𝑐𝑎tanh𝑎𝑇₁𝑐 +4𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 ) + ( 2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 4𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 ) } 𝑎𝑐5𝑎2 +𝐾₁₂ 𝑡(5)の初期条件と (138)(150)(151)式 を代入した。 𝑐(3𝑇₁+2𝑇₂) = 𝑐2𝑎 artanh 𝑐4 ( 𝑐𝑎tanh𝑎𝑇₁𝑐 ) (𝑐5𝑎) +𝐾₁₂ 𝑐(3𝑇₁+2𝑇₂) = 𝑐2𝑎 artanh(tanh𝑎𝑇₁𝑐) +𝐾₁₂ 𝑐(3𝑇₁+2𝑇₂) = 𝑐2𝑎 artanh{tanh(𝑎𝑇₁𝑐)} +𝐾₁₂ 𝑐(3𝑇₁+2𝑇₂) = 𝑐2𝑎(𝑎𝑇₁𝑐) +𝐾₁₂ 𝑐(3𝑇₁+2𝑇₂) = 𝑐𝑇₁+𝐾₁₂ 𝑐(4𝑇₁+2𝑇₂) = 𝐾₁₂ (152) のように𝐾₁₂が定まる。

(150)(152)式で定まった積分定数の値を(146)〜(149)式に代入すれば、S(5)系で見たアリスの固有時と位置と4元速度は次のようになる。

𝜏𝐴 = 𝑎𝐾₁₀𝑐4 tanh {𝑎𝑐(𝑡(5)𝐾₁₂𝑐)} 𝐾₁₁ (146)式 = 𝑎𝑐5𝑎2𝑐4 tanh [ 𝑎𝑐 { 𝑡(5)𝑐(4𝑇₁+2𝑇₂)𝑐 } ] ( 2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 4𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 ) ←積分定数の値を代入した。 = 𝑐𝑎 tanh 𝑎(𝑡(5)4𝑇₁2𝑇₂)𝑐 +2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 +4𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 (153) 𝑥(5) = 𝑐2𝑎 + 𝑎|𝐾₁₀| 𝑐3 cosh{𝑎𝑐(𝑡(5)𝐾₁₂𝑐)} (147)式 = 𝑐2𝑎 + 𝑎|𝑐5𝑎2| 𝑐3 cosh [ 𝑎𝑐 { 𝑡(5)𝑐(4𝑇₁+2𝑇₂)𝑐 } ] ←積分定数の値を代入した。 = 𝑐2𝑎 + 𝑐2 𝑎 cosh 𝑎(𝑡(5)4𝑇₁2𝑇₂)𝑐 (154) 𝑢(5)0 = 𝑐6 cosh2 {𝑎𝑐(𝑡(5)𝐾₁₂𝑐)} 𝑎2𝐾₁₀ (148)式 = 𝑐6 cosh2 [ 𝑎𝑐 { 𝑡(5)𝑐(4𝑇₁+2𝑇₂)𝑐 } ] 𝑎2𝑐5𝑎2 ←積分定数の値を代入した。 = 𝑐 cosh2 𝑎(𝑡(5)4𝑇₁2𝑇₂)𝑐 (155) 𝑢(5)1 = 𝐾₁₀|𝐾₁₀| 𝑐 sinh {𝑎𝑐(𝑡(5)𝐾₁₂𝑐)} (149)式 = 1𝑐 sinh [ 𝑎𝑐 { 𝑡(5)𝑐(4𝑇₁+2𝑇₂)𝑐 } ] ←積分定数の値を代入した。 = 𝑐 sinh 𝑎(𝑡(5)4𝑇₁2𝑇₂)𝑐 (156)

折り返し局面の終了時すなわち全行程の終了時では、 𝑡(5)=4𝑇₁+2𝑇₂ であるから、これを(154)式に代入すると 𝑥(5)=0 となり、アリスがボブと同じ位置に帰還することを示す。また、(155)(156)式に代入すると 𝑢(5)0=𝑐, 𝑢(5)1=0 となり、この瞬間にアリスが静止する(ボブとの相対速度が0になる)ことを示す。一方、(153)式に代入するとアリスの固有時は 2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 +4𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 となる。

ボブに固定した座標系での帰還局面におけるアリスの世界線のグラフ (154)式

これで表1の右半分も算出できたことになる。

最後にまとめておくと、この章ではアリスの視点の慣性系のことは知らないふりをして、わざわざ一般相対性理論の手法を使ってボブの視点の座標系で重力場における運動方程式を解いてアリスの世界線および固有時を求めたのである。その結果、最終的なアリスの経過時間として、第A章でアリスの視点の慣性系で計算した結果と同じ結果が得られたわけである。以上により、アリス・ボブのどちらの視点の座標系で計算してもボブの時間が遅れるという一貫した同じ結果が導かれ、「双子のパラドックス」はパラドックスではないことを示す具体例が計算できた。

総括

時間差の計算

ここまでで、最終的にアリスの経過時間 𝜏𝐴 = 2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 +4𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 がボブの経過時間 𝜏𝐵 = 4𝑇₁+2𝑇₂ より大きいことが計算できた。しかしその差あるいは比がどれくらいなのか、この式を見ただけではよくわからない。そもそも本当に 𝜏𝐴 > 𝜏𝐵 なのかも自明と思えないかもしれないので、式を変形して確認しておこう。𝜏𝐴 の双曲線関数をテーラー展開するのである。

𝜏𝐴 = 2𝑇₂cosh𝑎𝑇₁𝑐 +4𝑐𝑎sinh𝑎𝑇₁𝑐 = 2𝑇₂ { 1 + 12!(𝑎𝑇₁𝑐)2 + 14!(𝑎𝑇₁𝑐)4 + 16!(𝑎𝑇₁𝑐)6 + } +4𝑐𝑎 { 𝑎𝑇₁𝑐 + 13!(𝑎𝑇₁𝑐)3 + 15!(𝑎𝑇₁𝑐)5 + 17!(𝑎𝑇₁𝑐)7 + } = 2𝑇₂ { 1 + 12!(𝑎𝑇₁𝑐)2 + 14!(𝑎𝑇₁𝑐)4 + 16!(𝑎𝑇₁𝑐)6 + } +4𝑇₁ { 1 + 13!(𝑎𝑇₁𝑐)2 + 15!(𝑎𝑇₁𝑐)4 + 17!(𝑎𝑇₁𝑐)6 + } = (2𝑇₂+4𝑇₁) + ( 2𝑇₂2! + 4𝑇₁3! ) (𝑎𝑇₁𝑐)2 + ( 2𝑇₂4! + 4𝑇₁5! ) (𝑎𝑇₁𝑐)4 + ( 2𝑇₂6! + 4𝑇₁7! ) (𝑎𝑇₁𝑐)6 +

最後の右辺の第1項 (2𝑇₂+4𝑇₁) が 𝜏𝐵 に等しいので、右辺全体では 𝜏𝐵 より大きくなることがわかる。 𝑎𝑇₁𝑐1 の場合はほとんど差がないが、 𝑎𝑇₁𝑐1 の場合は大きな差が生じるようになる。

もう一度全体の図を載せておく。これは最初に載せた図と同じである。水色の線はアリスの世界線、茶色の線はボブの世界線を表す。𝜏𝐴 はアリスの固有時、𝜏𝐵 はボブの固有時である。

アリスに固定した座標系ボブに固定した座標系

この図は、 𝑎 = 9.8m⁄s, 𝑇₁ = 500日, 𝑇₂ = 1000日 として描いたものである。この間の経過時間は、ボブが4000日である一方アリスは約7100日である。

座標変換

最後に、座標変換の様子を図で示す。青い格子はアリスに固定した座標系、茶色い格子はボブに固定した座標系であり、実線は時間軸、破線は空間軸である。青い格子の1目盛りは250光日(約0.68光年 ≈ 6.5×10¹⁵m)である。縦方向について時間の単位で知りたければこれを光速で割ればよい。茶色い格子は空間軸またはボブの世界線に沿って測れば同じスケールであるが、それ以外の時間軸に沿って測るとスケールが異なる。ボブの座標系で出発局面と帰還局面の左寄りにに空白の領域がある。これは座標が定義されていない領域である。折り返し局面の右にも画面の外に同様の空白が生じる。

双子のパラドックスの座標変換の図(アリスに固定した座標系) 双子のパラドックスの座標変換の図(ボブに固定した座標系)
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