光や物質で満たされた宇宙に対するフリードマン方程式を解く(2)

第3章 スケール因子が一定でない解

スケール因子 𝑎 が一定でない場合、解くべき方程式は フリードマン方程式: 𝑎˙2𝑎2= 8𝜋𝐺3𝑐4𝜀 𝑘𝑎2 +𝛬3 (10) エネルギー保存則: 𝜀˙ +3𝑎˙𝑎(𝜀+𝑝) =0 (11) 状態方程式: 𝑝=𝑝(𝜀) (12) である。フリードマン方程式(10)式とエネルギー保存則の(11)式が成り立てば加速度方程式は自動的に成り立つ。

この章の各節でやる手続きの大まかな流れはだいたい同じである。まず状態方程式(12)式の具体的な形を仮定して、 𝑝 を 𝜀 の関数として表す。それをエネルギー保存則の式に代入して 𝑝 を消去する。そのエネルギー保存則を積分し(このときに積分定数が現れる)、 𝜀 について解いて 𝑎 の関数として表す。それをフリードマン方程式に代入して 𝜀 を消去する。そのフリードマン方程式を積分し(このときに積分定数が現れる)、 𝑎 と時間座標との関係を求めれば完了である。ただし2回目の積分で現れる積分定数は時間座標の原点をずらす効果しかなく時空の実体に影響しないので、面倒だからこの章では一貫して0にすることとする。

この先で方程式の形が複雑になってくると、複素関数が得意な人なら複素関数とみなして積分する方が楽な場合もある。だが複素関数はややこしくて間違えやすいので、この記事では原則として実関数の範囲で積分する。

3.1 光で満たされた宇宙

まず物質が存在せず中身が光子だけ(放射だけ)の宇宙について考えてみよう。先にこれをやる理由は、概念と計算が簡単だからである。静止質量が0の光子ガスの状態方程式(12)式は厳密に 𝑝=𝜀3 である。これをエネルギー保存則の(11)式に代入すると、 𝜀˙ +3𝑎˙𝑎(𝜀+𝜀3) = 0 𝜀˙+4𝑎˙𝑎𝜀 = 0 𝑎4𝜀˙ +4𝑎3𝑎˙𝜀 = 0 1𝑐dd𝑡 (𝑎4𝜀) = 0 𝑎4𝜀 = 𝐴 𝐴は積分定数) 𝜀=𝐴𝑎4 となり、放射のエネルギー密度はスケール因子の−4乗に比例する。これをフリードマン方程式(10)式に代入すると、 𝑎˙2𝑎2= 𝐾𝑟𝑎4 𝑘𝑎2 +𝛬3 (13) ただし 𝐾𝑟=8𝜋𝐺𝐴3𝑐4 となる。 𝐾𝑟 は正の定数であり、これが大きいほど宇宙に存在する放射のエネルギーが大きくなる。(13)式を変形すると、 𝑎˙2 = 𝐾𝑟𝑎2 𝑘 +𝛬3𝑎2 𝑎˙ = ± 𝐾𝑟𝑎2 𝑘 +𝛬3𝑎2 1𝑐d𝑎d𝑡 = ± 𝐾𝑟𝑎2 𝑘 +𝛬3𝑎2 (14) となり、両辺は恒等的に0でないから d𝑎 𝐾𝑟𝑎2 𝑘 +𝛬3𝑎2 = ±𝑐d𝑡 𝑎d𝑎 𝐾𝑟 𝑘𝑎2 +𝛬3𝑎4 = ±𝑐d𝑡 𝑎d𝑎 𝐾𝑟 𝑘𝑎2 +𝛬3𝑎4 = ±𝑐d𝑡 (15) となる。この先は 𝛬 と 𝑘 の値によって次のように場合分けをして考える。 【1】 𝛬=𝑘=0のとき 【2】 𝛬=0𝑘のとき 【3】 𝛬0のとき { 【3‐1】 𝛬<0のとき 【3‐2】 0<𝛬< 3𝑘24𝐾𝑟 のとき 【3‐3】 0<𝛬= 3𝑘24𝐾𝑟 のとき 【3‐4】 0 3𝑘24𝐾𝑟 <𝛬 のとき 【参考】 0<𝛬のときの別解


【1】 𝛬 = 𝑘 = 0 のとき

(15)式 𝑎d𝑎 𝐾𝑟 𝑘𝑎2 +𝛬3𝑎4 = ±𝑐d𝑡 (15)式 𝑎d𝑎𝐾𝑟 = ±𝑐d𝑡 𝛬=𝑘=0を代入した。 𝑎22𝐾𝑟 = ±𝑐𝑡 (積分定数を0とした。) 𝑎 = 𝐾𝑟4±2𝑐𝑡 (16) となる。複号が+の解は、時刻 𝑡 = 0 に 𝑎 = 0 から始まって減速膨張し、無限の未来に 𝑎 → ∞ になる宇宙である。複号が−の解はその時間反転である。

【2】 𝛬 = 0 ≠ 𝑘 のとき

(15)式 𝑎d𝑎 𝐾𝑟 𝑘𝑎2 +𝛬3𝑎4 = ±𝑐d𝑡 (15)式 𝑎d𝑎𝐾𝑟𝑘𝑎2 = ±𝑐d𝑡 𝛬=0を代入した。 𝐾𝑟𝑘𝑎2𝑘 = ±𝑐𝑡 (積分定数を0とした。) 𝐾𝑟𝑘𝑎2𝑘2 = (𝑐𝑡)2 (𝑐𝑡)2+𝑎2𝑘 = 𝐾𝑟𝑘2 となるから、時間座標 𝑐𝑡 と曲率半径 𝑎|𝑘| の関係をグラフに描けば円(𝑘 > 0)または直角双曲線(𝑘 < 0)になる。 𝑎 について解けば 𝑎= 𝐾𝑟𝑘𝑘(𝑐𝑡)2 (17) である。

𝑘 が正の場合、 𝑡 = 0 のときに(17)式を使うと(15)式の左辺の被積分関数の分母が0になってしまうが、(14)式までさかのぼってみるとそのときも 0 = 0 となってちゃんと成り立っている。よって 𝑡 = 0 のときも(17)式は解である。これは時刻 𝑡=𝐾𝑟𝑐𝑘 に 𝑎 = 0 から始まって減速膨張し、時刻 𝑡 = 0 に最大値 𝑎=𝐾𝑟𝑘 になって加速収縮に転じ、時刻 𝑡=𝐾𝑟𝑐𝑘 に 𝑎 = 0 になって終わる宇宙である。

𝑘 が負の場合、(17)式は数学的には1つの関数であるが物理的には2つの解が含まれている。一つは時刻 𝑡=𝐾𝑟𝑐𝑘 に 𝑎 = 0 から始まって減速膨張し、無限の未来に等速膨張になり 𝑎 → ∞ になる宇宙である。もう一つはその時間反転である。

【3】 𝛬 ≠ 0  のとき

(15)式を変形すると 𝑎d𝑎 𝐾𝑟 𝑘𝑎2 +𝛬3𝑎4 = ±𝑐d𝑡 (15)式 𝑎d𝑎 𝐾𝑟+ 𝛬3 (𝑎43𝑘𝛬𝑎2) = ±𝑐d𝑡 𝑎d𝑎 𝐾𝑟 3𝑘24𝛬+ 𝛬3 (𝑎23𝑘2𝛬) 2 = ±𝑐d𝑡 (18) となる。ここからさらに場合分けをする。

【3‐1】 𝛬 < 0 のとき

条件より 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 >0 𝛬3 (𝑎23𝑘2𝛬) 2 0 である。 𝑎d𝑎 𝐾𝑟 3𝑘24𝛬+ 𝛬3 (𝑎23𝑘2𝛬) 2 =±𝑐d𝑡 (18)式 の左辺の被積分関数の分母の根号の中身は正でなければならないから、 𝑎 は | 𝛬3 (𝑎23𝑘2𝛬) | < 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 を満たす範囲を動くことができる。そこで新しい変数を 𝑢 として 𝛬3 (𝑎23𝑘2𝛬) = 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 cos𝑢 (19) とおく。ただし 𝑢 は 0 < 𝑢 < 𝜋 の範囲から選ぶこととする(したがって sin 𝑢 > 0)。すると 𝑎23𝑘2𝛬 = 3𝛬 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 cos𝑢 (20) 2𝑎d𝑎 = 3𝛬 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 sin𝑢 d𝑢 ←両辺を微分した。 𝑎d𝑎 = 123𝛬 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 sin𝑢 d𝑢 (21) であるから、これらを(18)式に代入すると 𝑎d𝑎 𝐾𝑟 3𝑘24𝛬+ 𝛬3 (𝑎23𝑘2𝛬) 2 = ±𝑐d𝑡 (18)式 123𝛬 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 sin𝑢 d𝑢 𝐾𝑟 3𝑘24𝛬 ( 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 ) cos2𝑢 = ±𝑐d𝑡 (19)(21)式を代入した。 123𝛬 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 sin𝑢 d𝑢 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 1cos2𝑢 = ±𝑐d𝑡 123𝛬 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 sin𝑢 d𝑢 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 sin𝑢 = ±𝑐d𝑡 123𝛬d𝑢 = ±𝑐d𝑡 123𝛬𝑢 = ±𝑐𝑡 (積分定数を0とした。) 𝑢 = 2𝛬3𝑐𝑡 (22) のようになる。(19)式で 𝑢 の符号は正に限られていたので、(22)式の右辺の複号は 𝑡 < 0 のときは−を、 𝑡 > 0 のときは+を採用するべきである。(22)式(20)式に代入すれば 𝑎23𝑘2𝛬 = 3𝛬 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 cos(2𝛬3𝑐𝑡) 𝑎 = 3𝛬 ( 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 ) cos(2𝛬3𝑐𝑡) +3𝑘2𝛬 (23) となる。 𝑢 = 0 すなわち 𝑡 = 0 のときに(19)式を使うと(18)式の左辺の被積分関数の分母が0になってしまうので除外して考えてきたが、(14)式までさかのぼってみるとそのときも 0 = 0 となってちゃんと成り立っている。よって 𝑡 = 0 のときも(23)式は解である。これは時刻 𝑡= 12𝑐3𝛬 arccos 𝑘𝑘243𝛬𝐾𝑟 に 𝑎 = 0 から始まって減速膨張し、時刻 𝑡 = 0 に最大値 𝑎= 3𝛬 (𝐾𝑟3𝑘24𝛬) +3𝑘2𝛬 になって加速収縮に転じ、時刻 𝑡= 12𝑐3𝛬 arccos 𝑘𝑘243𝛬𝐾𝑟 に 𝑎 = 0 になって終わる宇宙である。

(23)式は 𝑘 の符号に応じて 𝑘>0のとき: 𝑎= 3𝑘2𝛬 { 4𝛬𝐾𝑟3𝑘2 +1 cos(2𝛬3𝑐𝑡) 1 } 𝑘=0のとき: 𝑎= 3𝐾𝑟𝛬4 cos(2𝛬3𝑐𝑡) 𝑘<0のとき: 𝑎= 3𝑘2𝛬 { 4𝛬𝐾𝑟3𝑘2 +1 cos(2𝛬3𝑐𝑡) +1 } のように書くこともできる。

【3‐2】 0<𝛬< 3𝑘24𝐾𝑟 のとき

条件より 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 <0 𝛬3 (𝑎23𝑘2𝛬) 2 0 である。 𝑎d𝑎 𝐾𝑟 3𝑘24𝛬+ 𝛬3 (𝑎23𝑘2𝛬) 2 =±𝑐d𝑡 (18)式 の左辺の被積分関数の分母の根号の中身は正でなければならないから、 𝑎 は | 𝛬3 (𝑎23𝑘2𝛬) | > 3𝑘24𝛬𝐾𝑟 を満たす範囲を動くことができる。そこで新しい変数を 𝑢 として 𝛬3 (𝑎23𝑘2𝛬) = ± 3𝑘24𝛬𝐾𝑟 cosh𝑢 = { 3𝑘24𝛬𝐾𝑟 cosh𝑢 ( 𝛬3 (𝑎23𝑘2𝛬) > 3𝑘24𝛬𝐾𝑟 , 𝑢>0 ) 3𝑘24𝛬𝐾𝑟 cosh𝑢 ( 𝛬3 (𝑎23𝑘2𝛬) < 3𝑘24𝛬𝐾𝑟 , 𝑢<0 ) (24) とおく。右辺全体の符号と 𝑢 の符号を同じにしておくということである。すると 𝑎23𝑘2𝛬 = ± 3𝛬 3𝑘24𝛬𝐾𝑟 cosh𝑢 (25) 2𝑎d𝑎 = ± 3𝛬 3𝑘24𝛬𝐾𝑟 sinh𝑢 d𝑢 ←両辺を微分した。 = 3𝛬 3𝑘24𝛬𝐾𝑟 |sinh𝑢| d𝑢 𝑎d𝑎 = 123𝛬 3𝑘24𝛬𝐾𝑟 |sinh𝑢| d𝑢 (26) であるから、これらを(18)式に代入すると 𝑎d𝑎 𝐾𝑟 3𝑘24𝛬+ 𝛬3 (𝑎23𝑘2𝛬) 2 = ±𝑐d𝑡 (18)式 123𝛬 3𝑘24𝛬𝐾𝑟 |sinh𝑢| d𝑢 𝐾𝑟 3𝑘24𝛬+ ( 3𝑘24𝛬𝐾𝑟 ) cosh2𝑢 = ±𝑐d𝑡 (25)(26)式を代入した。 123𝛬 3𝑘24𝛬𝐾𝑟 |sinh𝑢| d𝑢 3𝑘24𝛬𝐾𝑟 1+cosh2𝑢 = ±𝑐d𝑡 123𝛬 3𝑘24𝛬𝐾𝑟 |sinh𝑢| d𝑢 3𝑘24𝛬𝐾𝑟 |sinh𝑢| = ±𝑐d𝑡 123𝛬d𝑢 = ±𝑐d𝑡 123𝛬𝑢 = ±𝑐𝑡 (積分定数を0とした。) 𝑢 = ±2𝛬3𝑐𝑡 (27) のようになる。(27)式の複号は、 𝑡 と 𝑢 は同符号でも異符号でもどちらでもよいということである。(24)式で 𝑢 ≠ 0 に限られていたので、 𝑡 = 0 のときのことは後で考える。(27)式(25)式に代入すれば 𝑎23𝑘2𝛬 = ± 3𝛬 3𝑘24𝛬𝐾𝑟 cosh(±2𝛬3𝑐𝑡) 𝑎 = ± 3𝛬 ( 3𝑘24𝛬𝐾𝑟 ) cosh(2𝛬3𝑐𝑡) +3𝑘2𝛬 (28) となる。1行目の2つの複号は、 𝑡 > 0 のときは複号同順で 𝑡 < 0 のときは複号逆順(そんな言葉はないかもしれないが)である。だが cosh 関数は偶関数であるから引数の複号はあってもなくても同じなので、2個目の複号は不要となり、結局1個目の複号はいつでもどちらでもよいことになって2行目のようになる。ただし 𝑘 が負の場合は、−にすると根号の中身が常に負になってしまうので+の選択肢しかない。(28)式は 𝑘 の符号に応じて 𝑘>2𝛬𝐾𝑟3 のとき: 𝑎= 3𝑘2𝛬 { ± 14𝛬𝐾𝑟3𝑘2 cosh(2𝛬3𝑐𝑡) +1 } (29) 𝑘<2𝛬𝐾𝑟3 のとき: 𝑎= 3𝑘2𝛬 { 14𝛬𝐾𝑟3𝑘2 cosh(2𝛬3𝑐𝑡) 1 } (30) のように書くこともできる。

𝑘 が正の場合、 𝑢 = 0 すなわち 𝑡 = 0 のときに(24)式を使うと(18)式の左辺の被積分関数の分母が0になってしまうので除外して考えてきたが、(14)式までさかのぼってみるとそのときも 0 = 0 となってちゃんと成り立っている。よって 𝑡 = 0 のときも(28)(29)式は解である。複号が+の解は、無限の過去に 𝑎 → ∞ だったものが減速収縮し、時刻 𝑡 = 0 に最小値 𝑎= 3𝛬 (3𝑘24𝛬𝐾𝑟) +3𝑘2𝛬 になって加速膨張に転じ、無限の未来に 𝑎 → ∞ になる宇宙である。複号が−の解は、時刻 𝑡= 12𝑐3𝛬 arcosh 𝑘𝑘243𝛬𝐾𝑟 に 𝑎 = 0 から始まって減速膨張し、時刻 𝑡 = 0 に最大値 𝑎= 3𝛬 (3𝑘24𝛬𝐾𝑟) +3𝑘2𝛬 になって加速収縮に転じ、時刻 𝑡= 12𝑐3𝛬 arcosh 𝑘𝑘243𝛬𝐾𝑟 に 𝑎 = 0 になって終わる宇宙である。

𝑘 が負の場合、(28)(30)式は数学的には1つの関数であるが物理的には2つの解が含まれている。一つは時刻 𝑡= 12𝑐3𝛬 arcosh 𝑘𝑘243𝛬𝐾𝑟 に 𝑎 = 0 から始まって減速膨張し、時刻 𝑡= 12𝑐3𝛬 arcosh 𝑘+43𝛬𝐾𝑟 𝑘243𝛬𝐾𝑟 𝑎=3𝐾𝑟𝛬4 になって加速膨張に転じ、無限の未来に 𝑎 → ∞ になる宇宙である。もう一つはその時間反転である。

【3‐3】 0<𝛬=3𝑘24𝐾𝑟 のとき

条件より 𝐾𝑟3𝑘24𝛬=0 (31) となるから、これを(18)式に代入すると 𝑎d𝑎 𝐾𝑟 3𝑘24𝛬+ 𝛬3 (𝑎23𝑘2𝛬) 2 = ±𝑐d𝑡 (18)式 𝑎d𝑎 𝛬3 (𝑎23𝑘2𝛬) 2 = ±𝑐d𝑡 (31)式を代入した。 𝑎d𝑎 𝛬3 |𝑎23𝑘2𝛬| = ±𝑐d𝑡 3𝛬 𝑎d𝑎 |𝑎23𝑘2𝛬| = ±𝑐d𝑡 のようになる。右辺の全体に複号がついているから左辺の符号がひっくり返っても等式の意味は変わらないので、左辺の被積分関数の分母の絶対値記号はあってもなくても同じだからはずすと、 3𝛬 𝑎d𝑎 𝑎23𝑘2𝛬 = ±𝑐d𝑡 123𝛬 ln |𝑎23𝑘2𝛬| = ±𝑐𝑡 (積分定数を0とした。) ln |𝑎23𝑘2𝛬| = ±2𝛬3𝑐𝑡 |𝑎23𝑘2𝛬| = exp(±2𝛬3𝑐𝑡) 𝑎23𝑘2𝛬 = ±exp(±2𝛬3𝑐𝑡) (複号任意) 𝑎 = ±exp(±2𝛬3𝑐𝑡) +3𝑘2𝛬 (32) となる。2個ある複号はそれぞれどちらでもよいのだが、 𝑘 が負の場合は、 exp の前についている1個目の複号については−にすると根号の中身が常に負になってしまうので+の選択肢しかない。(32)式は 𝑘 の符号に応じて 𝑘 を消去して 𝑘=2𝛬𝐾𝑟3 のとき: 𝑎= ±exp(±2𝛬3𝑐𝑡) +3𝐾𝑟𝛬 (複号任意) 𝑘=2𝛬𝐾𝑟3 のとき: 𝑎= exp(±2𝛬3𝑐𝑡) 3𝐾𝑟𝛬 のように書くこともできる。(31)式の条件があるから 𝐾𝑟 と 𝛬 と 𝑘 のうち任意の1個は式から消去できる。

𝑘 が正の場合、複号に応じて4つの解がある。1個目の複号が+で2個目の複号が+の解は、無限の過去に 𝑎 =3𝑘2𝛬 =2𝐾𝑟𝑘 =3𝐾𝑟𝛬4 だったものが加速膨張し、無限の未来に 𝑎 → ∞ になる宇宙である。1個目の複号が+で2個目の複号が−の解はその時間反転である。1個目の複号が−で2個目の複号が+の解は、無限の過去に 𝑎 =3𝑘2𝛬 =2𝐾𝑟𝑘 =3𝐾𝑟𝛬4 だったものが加速収縮し、時刻 𝑡 = 12𝑐3𝛬 ln3𝑘2𝛬 = 𝐾𝑟𝑐𝑘 ln2𝐾𝑟𝑘 = 14𝑐3𝛬 ln3𝐾𝑟𝛬 に 𝑎 = 0 になって終わる宇宙である。1個目の複号が−で2個目の複号が−の解はその時間反転である。

𝑘 が負の場合、複号に応じて2つの解がある。複号が+の解は、時刻 𝑡 = 12𝑐3𝛬 ln3𝑘2𝛬 = 𝐾𝑟𝑐𝑘 ln2𝐾𝑟𝑘 = 14𝑐3𝛬 ln3𝐾𝑟𝛬 に 𝑎 = 0 から始まって減速膨張し、時刻 𝑡 = 12𝑐3𝛬 ln3𝑘𝛬 = 𝐾𝑟𝑐𝑘 ln4𝐾𝑟𝑘 = 14𝑐3𝛬 ln12𝐾𝑟𝛬 𝑎 =3𝑘2𝛬 =2𝐾𝑟𝑘 =3𝐾𝑟𝛬4 になって加速膨張に転じ、無限の未来に 𝑎 → ∞ になる宇宙である。複号が−の解はその時間反転である。

【3‐4】 0 3𝑘24𝐾𝑟 <𝛬 のとき

条件より 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 >0 𝛬3 (𝑎23𝑘2𝛬) 2 0 であるから、 𝑎d𝑎 𝐾𝑟 3𝑘24𝛬+ 𝛬3 (𝑎23𝑘2𝛬) 2 =±𝑐d𝑡 (18)式 の左辺の被積分関数の分母の根号の中身は 𝑎 にかかわらず正である。そこで新しい変数を 𝑢 として 𝛬3 (𝑎23𝑘2𝛬) = 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 sinh𝑢 (33) とおく。すると 𝑎23𝑘2𝛬 = 3𝛬 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 sinh𝑢 (34) 2𝑎d𝑎 = 3𝛬 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 cosh𝑢 d𝑢 ←両辺を微分した。 𝑎d𝑎 = 123𝛬 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 cosh𝑢 d𝑢 (35) であるから、これらを(18)式に代入すると 𝑎d𝑎 𝐾𝑟 3𝑘24𝛬+ 𝛬3 (𝑎23𝑘2𝛬) 2 = ±𝑐d𝑡 (18)式 123𝛬 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 cosh𝑢 d𝑢 𝐾𝑟 3𝑘24𝛬+ ( 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 ) sinh2𝑢 = ±𝑐d𝑡 (33)(35)式を代入した。 123𝛬 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 cosh𝑢 d𝑢 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 1+sinh2𝑢 = ±𝑐d𝑡 123𝛬 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 cosh𝑢 d𝑢 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 cosh𝑢 = ±𝑐d𝑡 123𝛬d𝑢 = ±𝑐d𝑡 123𝛬𝑢 = ±𝑐𝑡 (積分定数を0とした。) 𝑢 = ±2𝛬3𝑐𝑡 (36) のようになる。(36)式(34)式に代入すれば 𝑎23𝑘2𝛬 = 3𝛬 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 sinh(±2𝛬3𝑐𝑡) 𝑎 = 3𝛬 ( 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 ) sinh(±2𝛬3𝑐𝑡) +3𝑘2𝛬 (37) となる。複号が+の解は、時刻 𝑡= 12𝑐3𝛬 arsinh 𝑘43𝛬𝐾𝑟𝑘2 に 𝑎 = 0 から始まって減速膨張し、時刻 𝑡= 12𝑐3𝛬 arsinh 43𝛬𝐾𝑟𝑘 43𝛬𝐾𝑟𝑘2 𝑎=3𝐾𝑟𝛬4 になって加速膨張に転じ、無限の未来に 𝑎 → ∞ になる宇宙である。複号が−の解はその時間反転である。

(37)式は 𝑘 の符号に応じて 0<𝑘<2𝛬𝐾𝑟3 のとき: 𝑎= 3𝑘2𝛬 { 4𝛬𝐾𝑟3𝑘21 sinh(±2𝛬3𝑐𝑡) +1 } 𝑘=0のとき: 𝑎= 3𝐾𝑟𝛬4 sinh(±2𝛬3𝑐𝑡) 2𝛬𝐾𝑟3<𝑘<0 のとき: 𝑎= 3𝑘2𝛬 { 4𝛬𝐾𝑟3𝑘21 sinh(±2𝛬3𝑐𝑡)1 } のように書くこともできる。

【参考】  0 < 𝛬 のときの別解

𝛬 ≠ 0 となるすべての場合についてすでに【3‐1】【3‐4】で言い尽くしたわけだが、このうち 0 < 𝛬 となる【3‐2】【3‐4】は1つの共通した表式でまとめて解を表すこともできる。そのやり方をやってみよう。

𝑎d𝑎 𝐾𝑟 3𝑘24𝛬+ 𝛬3 (𝑎23𝑘2𝛬) 2 = ±𝑐d𝑡 (18)式 を置換積分するため新しい変数を 𝑣 として 𝑎23𝑘2𝛬 = 𝑣 34𝛬𝑣 (𝐾𝑟3𝑘24𝛬) (38) と置く。両辺を微分すると 2𝑎d𝑎 = { 1+ 34𝛬𝑣2 ( 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 ) } d𝑣 𝑎d𝑎 = 12 { 1+ 34𝛬𝑣2 ( 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 ) } d𝑣 = 12𝑣 { 𝑣+ 34𝛬𝑣 ( 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 ) } d𝑣 (39) である。これらを(18)式に代入すると、左辺の積分の中の分子は(39)式に等しく、左辺の積分の中の分母は 𝐾𝑟 3𝑘24𝛬 +𝛬3 (𝑎23𝑘2𝛬) 2 = 𝐾𝑟 3𝑘24𝛬 +𝛬3 { 𝑣 34𝛬𝑣 ( 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 ) } 2 (38)式を代入した。 = 𝐾𝑟 3𝑘24𝛬 +𝛬3 [ 𝑣2 32𝛬 ( 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 ) + { 34𝛬𝑣 ( 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 ) } 2 ] = ( 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 ) +𝛬3𝑣2 12 ( 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 ) +𝛬3 { 34𝛬𝑣 ( 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 ) } 2 = 𝛬3𝑣2 +12 ( 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 ) +𝛬3 { 34𝛬𝑣 ( 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 ) } 2 = 𝛬3 [ 𝑣2+ 32𝛬 ( 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 ) + { 34𝛬𝑣 ( 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 ) } 2 ] = 𝛬3 { 𝑣+ 34𝛬𝑣 ( 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 ) } 2 = 𝛬3 | 𝑣+ 34𝛬𝑣 ( 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 ) | となるから、(18)式全体は 12𝑣 { 𝑣+ 34𝛬𝑣 ( 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 ) } d𝑣 𝛬3 | 𝑣+ 34𝛬𝑣 ( 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 ) | =±𝑐d𝑡 のようになる。右辺の全体に複号がついているから左辺の符号がひっくり返っても等式の意味は変わらないので、左辺の被積分関数の分母の絶対値記号はあってもなくても同じだからはずすと、 12𝑣 { 𝑣+ 34𝛬𝑣 ( 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 ) } d𝑣 𝛬3 { 𝑣+ 34𝛬𝑣 ( 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 ) } = ±𝑐d𝑡 123𝛬 d𝑣𝑣 = ±𝑐d𝑡 123𝛬ln|𝑣| = ±𝑐𝑡 (積分定数を0とした。) ln|𝑣| = ±2𝛬3𝑐𝑡 |𝑣| = exp(±2𝛬3𝑐𝑡) 𝑣 = ±exp(±2𝛬3𝑐𝑡) (複号任意)(40) のようになる。また、(38)式を 𝑎 について解けば 𝑎= 𝑣 34𝛬𝑣 (𝐾𝑟3𝑘24𝛬) +3𝑘2𝛬 (41) であるから、(40)式の 𝑣 を(41)式に代入したものが解である。(41)式には 𝑣 が2つあるから本当に代入してしまうと4つ現れる複号の可能な組み合わせを説明するのが面倒だからこのままにしておこう。

今のやり方で出てきた(40)(41)式は、当然ながら【3‐2】【3‐4】で求めた解と基本的には同じであるが、 𝑡 が定数分だけずれている。このやり方があるなら【3‐2】【3‐4】は不要と思うかもしれない。だが、共通の式で表されたといっても、解の挙動については 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 の符号に応じて大きく異なるので場合分けをして考えねばならないし、見た目があまりきれいではない。最初から場合分けをした【3‐2】【3‐4】とどちらが便利だと思うかは人によるだろう。


解のまとめ

この節の結果をまとめると、光(放射)で満たされた宇宙に対するフリードマン方程式 𝑎˙2𝑎2= 𝐾𝑟𝑎4 𝑘𝑎2 +𝛬3 (𝐾𝑟>0) (13)式 の解は 0 3𝑘24𝐾𝑟 <𝛬 のとき: 𝑎= 3𝑘2𝛬 ± 3𝛬 ( 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 ) sinh(2𝛬3𝑐𝑡) 0< 𝛬=3𝑘24𝐾𝑟 のとき: 𝑎= 3𝑘2𝛬 ±exp(±2𝛬3𝑐𝑡) (複号任意) 0<𝛬< 3𝑘24𝐾𝑟 のとき: 𝑎= 3𝑘2𝛬 ± 3𝛬 ( 3𝑘24𝛬𝐾𝑟 ) cosh(2𝛬3𝑐𝑡) 𝛬=0=𝑘のとき: 𝑎=𝐾𝑟4±2𝑐𝑡 𝛬=0𝑘のとき: 𝑎= 𝐾𝑟𝑘𝑘(𝑐𝑡)2 𝛬<0のとき: 𝑎= 3𝑘2𝛬 + 3𝛬 ( 𝐾𝑟3𝑘24𝛬 ) cos(2𝛬3𝑐𝑡) である。項の順番が先ほどと変わっているところがあるが、縦に並べたときに見比べやすくなるようにしただけだ。解は以上だ。

なお蛇足であるが、 𝛬 ≠ 0 の場合は 𝑘 の符号に応じて書き分けると、 𝛬 > 0 ならば 2𝛬𝐾𝑟3<𝑘 のとき: 𝑎= 3𝑘2𝛬 { ± 14𝛬𝐾𝑟3𝑘2 cosh(2𝛬3𝑐𝑡) +1 } 𝑘=2𝛬𝐾𝑟3 のとき: 𝑎= ±exp(±2𝛬3𝑐𝑡) +3𝐾𝑟𝛬 (複号任意) 0<𝑘<2𝛬𝐾𝑟3 のとき: 𝑎= 3𝑘2𝛬 { 4𝛬𝐾𝑟3𝑘21 sinh(±2𝛬3𝑐𝑡) +1 } 𝑘=0のとき: 𝑎= 3𝐾𝑟𝛬4 sinh(±2𝛬3𝑐𝑡) 2𝛬𝐾𝑟3<𝑘<0 のとき: 𝑎= 3𝑘2𝛬 { 4𝛬𝐾𝑟3𝑘21 sinh(±2𝛬3𝑐𝑡)1 } 𝑘=2𝛬𝐾𝑟3 のとき: 𝑎= exp(±2𝛬3𝑐𝑡) 3𝐾𝑟𝛬 𝑘<2𝛬𝐾𝑟3 のとき: 𝑎= 3𝑘2𝛬 { 14𝛬𝐾𝑟3𝑘2 cosh(2𝛬3𝑐𝑡) 1 } のように書くことができ、 𝛬 < 0 ならば 𝑘>0のとき: 𝑎= 3𝑘2𝛬 { 4𝛬𝐾𝑟3𝑘2 +1 cos(2𝛬3𝑐𝑡) 1 } 𝑘=0のとき: 𝑎= 3𝐾𝑟𝛬4 cos(2𝛬3𝑐𝑡) 𝑘<0のとき: 𝑎= 3𝑘2𝛬 { 4𝛬𝐾𝑟3𝑘2 +1 cos(2𝛬3𝑐𝑡) +1 } のように書くことができる。場合分けが増えてしまうが、関数の挙動を頭で想像するにはこの表式の方が便利かもしれない。

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