ドジッター時空の座標変換と5次元への埋め込み(2)

2.2 宇宙定数が正の場合

表1で宇宙定数 𝛬 が正の場合の解は④〜⑥である。 𝛬 = 0 の場合と同様の考え方で座標変換をして、一定範囲内の空間の曲率が時間とともにどのように変化するか見てみよう。

2.2.1 空間の曲率がゼロの場合

平坦な空間(𝑘 = 0)である⑤の解 𝑎=e±𝑤𝐿 (24) d𝑠2 = d𝑤2 + (e±𝑤𝐿)2 ( d𝑟2 +𝑟2d𝜃2 +𝑟2sin2𝜃d𝜑2 ) (25) を最初に考える。これは複号が正なら加速膨張、負なら減速収縮である。この先このページでは最下行までずっと複号同順である。ここで動径座標に関して 𝑟𝜌 = 𝑎𝑟 =𝑟e±𝑤𝐿 (26) という座標変換をする。このとき逆変換は 𝜌𝑟 = 𝜌e𝑤𝐿 (27) であり、その微分は d𝑟 = ∂𝑟∂𝑤d𝑤+∂𝑟∂𝜌d𝜌 = 𝜌𝐿e𝑤𝐿d𝑤 +e𝑤𝐿d𝜌 = e𝑤𝐿 (𝜌𝐿d𝑤+d𝜌) のようになる。これらを2乗すれば 𝑟2 = 𝜌2e2𝑤𝐿 (28) d𝑟2 = e2𝑤𝐿 ( 𝜌2𝐿2d𝑤2 2𝜌𝐿d𝑤d𝜌 +d𝜌2 ) (29) である。(25)式を変形し(28)・(29)式を代入して座標変換後の線素の式を計算すると、 d𝑠2 = d𝑤2 +e±2𝑤𝐿 ( d𝑟2 +𝑟2d𝜃2 +𝑟2sin2𝜃d𝜑2 ) = d𝑤2 +e±2𝑤𝐿d𝑟2 + e±2𝑤𝐿𝑟2 (d𝜃2+sin2𝜃d𝜑2) = d𝑤2 + e±2𝑤𝐿 e2𝑤𝐿 ( 𝜌2𝐿2d𝑤2 2𝜌𝐿d𝑤d𝜌 +d𝜌2 ) + e±2𝑤𝐿𝜌2 e2𝑤𝐿 (d𝜃2+sin2𝜃d𝜑2) = d𝑤2 + ( 𝜌2𝐿2d𝑤2 2𝜌𝐿d𝑤d𝜌 +d𝜌2 ) + 𝜌2 (d𝜃2+sin2𝜃d𝜑2) = (1𝜌2𝐿2)d𝑤2 2𝜌𝐿d𝑤d𝜌 +d𝜌2 + 𝜌2 (d𝜃2+sin2𝜃d𝜑2) (30) となる。この計量は 𝑤 に依存せず定常であるが、非対角成分である d𝑤d𝜌 の項があってわかりにくいので、計量が対角になるようにさらなる座標変換を考える。動径座標はもういじりたくないので、時間座標を座標変換することで対角計量を目指そう。新しい時間座標を 𝑣 として、今のところ未知のその変換と逆変換を 𝑤 𝑣=𝑣(𝑤,𝜌) 𝑣 𝑤=𝑤(𝑣,𝜌) のように書く。すると、 d𝑤 = ∂𝑤∂𝑣d𝑣+∂𝑤∂𝜌d𝜌 d𝑤2 = (∂𝑤∂𝑣)2d𝑣2 +2∂𝑤∂𝑣∂𝑤∂𝜌d𝑣d𝜌 +(∂𝑤∂𝜌)2d𝜌2 であるから、これらを(30)式に代入すると d𝑠2 = (1𝜌2𝐿2)d𝑤2 2𝜌𝐿d𝑤d𝜌 +d𝜌2 + 𝜌2 (d𝜃2+sin2𝜃d𝜑2) = (1𝜌2𝐿2) { (∂𝑤∂𝑣)2d𝑣2 +2∂𝑤∂𝑣∂𝑤∂𝜌d𝑣d𝜌 +(∂𝑤∂𝜌)2d𝜌2 } 2𝜌𝐿 (∂𝑤∂𝑣d𝑣+∂𝑤∂𝜌d𝜌)d𝜌 +d𝜌2 + 𝜌2 (d𝜃2+sin2𝜃d𝜑2) = (1𝜌2𝐿2) (∂𝑤∂𝑣)2d𝑣2 2(1𝜌2𝐿2) ∂𝑤∂𝑣∂𝑤∂𝜌d𝑣d𝜌 (1𝜌2𝐿2) (∂𝑤∂𝜌)2d𝜌2 2𝜌𝐿∂𝑤∂𝑣d𝑣d𝜌 2𝜌𝐿∂𝑤∂𝜌d𝜌2 +d𝜌2 + 𝜌2 (d𝜃2+sin2𝜃d𝜑2) = (1𝜌2𝐿2) (∂𝑤∂𝑣)2d𝑣2 2∂𝑤∂𝑣 { (1𝜌2𝐿2) ∂𝑤∂𝜌 ±𝜌𝐿 } d𝑣d𝜌 + { (1𝜌2𝐿2) (∂𝑤∂𝜌)2 2𝜌𝐿∂𝑤∂𝜌 +1 } d𝜌2 + 𝜌2 (d𝜃2+sin2𝜃d𝜑2) (31) となる。ここで d𝑣d𝜌 の係数を0にすればよいのだが、 ∂𝑤∂𝑣=0 では困る(まともな座標変換にならない)から、 (1𝜌2𝐿2) ∂𝑤(𝑣,𝜌)∂𝜌 ±𝜌𝐿 = 0 (1𝜌2𝐿2) ∂𝑤(𝑣,𝜌)∂𝜌 = 𝜌𝐿 ∂𝑤(𝑣,𝜌)∂𝜌 = 𝜌𝐿(1𝜌2𝐿2) (32) 𝑤(𝑣,𝜌) = ± 𝐿2 log|1𝜌2𝐿2| +𝑓(𝑣) (𝑓(𝑣)は𝑣の任意関数) のようにすればよい。この偏微分方程式はボケっとしていると何が独立変数で何が従属変数なのか忘れそうになるので、括弧内に独立変数を明記しておいた。これを満たすような座標変換をすればよいのだが、 𝑓(𝑣) は任意と言われても手掛かりがなさ過ぎて困ってしまう。そこで、なるべく簡単になるように、特に根拠はないが試しに空間原点(𝜌 = 0)で恒等変換になるように 𝑓(𝑣) = 𝑣 としてみよう。そうすれば 𝑤 = ± 𝐿2 log|1𝜌2𝐿2| +𝑣 (33) 𝑣 = 𝐿2 log|1𝜌2𝐿2| +𝑤 (34) となる。

(33)式より ∂𝑤∂𝑣=1(35) である。(32)(35)式(31)式に代入して座標変換後の線素の式を計算すると、 d𝑠2 = (1𝜌2𝐿2) (∂𝑤∂𝑣)2d𝑣2 2∂𝑤∂𝑣 { (1𝜌2𝐿2) ∂𝑤∂𝜌 ±𝜌𝐿 } d𝑣d𝜌 + { (1𝜌2𝐿2) (∂𝑤∂𝜌)2 2𝜌𝐿∂𝑤∂𝜌 +1 } d𝜌2 + 𝜌2 (d𝜃2+sin2𝜃d𝜑2) = (1𝜌2𝐿2) 12d𝑣2 21 [ (1𝜌2𝐿2) { 𝜌𝐿(1𝜌2𝐿2) } ±𝜌𝐿 ] d𝑣d𝜌 + [ (1𝜌2𝐿2) { 𝜌𝐿(1𝜌2𝐿2) } 2 2𝜌𝐿 { 𝜌𝐿(1𝜌2𝐿2) } +1 ] d𝜌2 + 𝜌2 (d𝜃2+sin2𝜃d𝜑2) = (1𝜌2𝐿2)d𝑣2 2(𝜌𝐿±𝜌𝐿)d𝑣d𝜌 + { 𝜌2 𝐿2(1𝜌2𝐿2) +2 𝜌2 𝐿2(1𝜌2𝐿2) +1 } d𝜌2 + 𝜌2 (d𝜃2+sin2𝜃d𝜑2) = (1𝜌2𝐿2)d𝑣2 + ( 𝜌2𝐿2 1𝜌2𝐿2 + 2𝜌2𝐿2 1𝜌2𝐿2 + 1𝜌2𝐿2 1𝜌2𝐿2 ) d𝜌2 + 𝜌2 (d𝜃2+sin2𝜃d𝜑2) = (1𝜌2𝐿2)d𝑣2 + 11𝜌2𝐿2 d𝜌2 + 𝜌2 (d𝜃2+sin2𝜃d𝜑2) (36) となる。 𝐿=3𝛬 を代入すれば、 d𝑠2 = (113𝛬𝜌2)d𝑣2 + 1113𝛬𝜌2 d𝜌2 + 𝜌2 (d𝜃2+sin2𝜃d𝜑2) (37) となる。これは「宇宙項があったらシュバルツシルト解はどう変わるか」の記事で出てきたドジッター解と同じものである。これのことを「ドジッター時空」(de Sitter spacetime)とも呼ぶ。この計量は 𝜌 < 𝐿 で静的である。平坦な空間が加速膨張/減速収縮していると思っていた⑤の解は、ドジッター時空と同じものだったのだ。

ここでは2段階で座標変換をしたが、最初の座標系と最後の座標系が結局どういう関係になっているのかを求めると座標変換は 𝑣 = 𝐿2 log|1𝜌2𝐿2| +𝑤 (34)式 = 𝐿2 log | 1 (𝑟e±𝑤𝐿)2 𝐿2 | +𝑤 (26)式を代入した。 = 𝐿2 log | 1 𝑟2𝐿2 e±2𝑤𝐿 | +𝑤 (38) 𝜌 = 𝑟e±𝑤𝐿 (26)式 であり、逆変換は 𝑤 = ± 𝐿2 log|1𝜌2𝐿2| +𝑣 (33)式 𝑟 = 𝜌e𝑤𝐿 (27)式 = 𝜌 e 1𝐿 ( ± 𝐿2 log|1𝜌2𝐿2| +𝑣 ) (33)式を代入した。 = 𝜌 e 12 log|1𝜌2𝐿2| 𝑣𝐿 = 𝜌|1𝜌2𝐿2| e𝑣𝐿 (39) である。

ただし 𝜌 = 𝐿 の領域ではこれらの変換式が使えない。その領域は元の座標系で考えれば(26)(27)式より 𝑟=𝐿e𝑤𝐿 ということになるが、この関係を満たす 𝑤 と 𝑟 を(38)式に代入すると新しい座標系では 𝑣 → ±∞ となって無限の未来/過去に飛ばされてしまう。逆に新しい座標系における 𝜌 = 𝐿 を元の座標系に変換するために(33)・(39)式に代入すると 𝑤 → ∓∞ , 𝑟 → +∞ となって無限の過去/未来の無限遠に飛ばされてしまう。だから 𝜌 = 𝐿 となる線上(4次元時空内で考えれば3次元超曲面上)の領域に限りこの座標変換は諦めることにする。

以上の関係を図示したものが図34である。茶色で描かれた座標系(𝜌 < 𝐿 で静的; (36)式)と青色で描かれた座標系(𝑘 = 0 のFLRW計量; (25)式)は、 𝜌 = 𝐿 の領域を除いて一対一に対応する。

𝛬 > 0 の場合における静的な計量とFLRW計量(𝑘 = 0)との座標変換

図3. スケール因子を 𝑎=e𝑤𝐿 としたFLRW計量(表1の⑤で複号が正)の座標変換。

茶色の線は 𝜌 < 𝐿 で静的な座標系、青色の線はFLRW計量の座標系を表す。

左図で青色の線が密集している 𝜌 = 𝐿 の線上の領域は、青色の座標系に対応する領域がない。右図で茶色の破線が密集している 𝑟=𝐿e𝑤𝐿 の線上の領域は、茶色の座標系に対応する領域がない。これらの線上を除いて2つの座標系は一対一に対応する。

𝛬 > 0 の場合における静的な計量とFLRW計量(𝑘 = 0)との座標変換

図4. スケール因子を 𝑎=e𝑤𝐿 としたFLRW計量(表1の⑤で複号が負)の座標変換。

茶色の線は 𝜌 < 𝐿 で静的な座標系、青色の線はFLRW計量の座標系を表す。

左図で青色の線が密集している 𝜌 = 𝐿 の線上の領域は、青色の座標系に対応する領域がない。右図で茶色の破線が密集している 𝑟=𝐿e𝑤𝐿 の線上の領域は、茶色の座標系に対応する領域がない。これらの線上を除いて2つの座標系は一対一に対応する。

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